国選付添人って何者? 選任要件?


各地で成人式が行われた。成人式といっても年度ごとに招待されるから、明日から3月末までの19歳の子どもも成人式に参加していることになる。そう思うと中々不思議な光景ではある。

また、各地の成人式で色々と騒ぎを起こした「新成人」もいるわけで、いつものことながら「歳を重ねれば大人になれるもんでもないからな。」と我が身を反省しながら思う。

新成人に少年法が適用されるかどうか?

「成人式で新成人が悪さしました。逮捕されました。」

この場合、その後にたどる法律は注意しなければならない。20歳未満であれば原則として少年法が適用されるからだ。

例えば新成人が人に暴力をふるってケガをさせてしまい、あっけなく逮捕されたとしよう。これは傷害事件である(刑法204条)。

少年法40条では少年の刑事事件については少年法に書かれていないことについては、大人の刑事事件と同じですよということが書いてある。大人の刑事事件では通常、刑事訴訟法が適用される。だから。裏を返せば、少年法に書かれてあることと、刑事訴訟法に書かれてあることが違う場合、犯人が少年であれば、少年法の方を優先して適用しなければならないことになる。

では少年とは何か? 少年法2条1項に書かれており、少年とは20歳未満の者をいう。20歳以上の者は成人という。

つまり成人式に参加している新成人には少年もいれば、成人もいるということになる。

傷害事件を起こした犯人は少年であれば少年法に基づいて(建前上)保護される対象になるが、成人であれば刑事訴訟法に基づいて処罰される対象になる。天と地のような扱いの違いである。

新成人が少年だった場合

新成人が少年だった場合、この少年は逮捕・勾留などの捜査を経て家庭裁判所に送致されることになる(少年法42条1項前段)。

弁護人

大抵の場合、勾留されていれば被疑者国選弁護人対象事件であるから、刑事訴訟法に基づき弁護士が国費でついている。だから警察や検察に少年がいる間は、国が勝手に弁護士をつけてくれているのだ。

ちなみに国が勝手につけてくれる弁護人のことを国選弁護人、自分が(お金を払って)頼んだ弁護人のことを私選弁護人という。カルロス・ゴーンは私選弁護人を頼んでいた。刑事事件で有名な弁護士に弁護をしてもらいたければ、自分でお金を出さなければいけない。というのも、国選弁護人は誰を弁護人にするか選べないのである。

少年が家庭裁判所に送られてからは事情が異なってくる。まずは国選弁護人がいなくなる(少年法40条2項)。弁護人というのは刑事事件の弁護をする弁護士のことだからだ。家裁に送られてからは少年事件という扱いになるので、刑事事件の弁護人は用済みになる。

付添人

ただ、家庭裁判所でも少年のために色々と活動する人は必要である。家族に連絡をとったり、励ましたり、法律上の説明をしたりする弁護士が必要になる。このような弁護士を付添人という。

弁護人と同じように、付添人にも国選付添人私選付添人がいる。

国選付添人がついたほうが少年にとっては良いこともある。お金がかからないし、余計な手続きをしなくていいし、弁護士を探したりする必要もないからだ。

ただ、勾留されると自動的に国選弁護人がつくのと異なり、少年事件では家庭裁判所に送られても自動的に国選付添人はつかない

どういう場合に国選付添人がつくのか

必要的国選付添人選任事件

国選付添人が選任される事件の代表例は検察官関与事件と呼ばれる事件だ(少年法22条の2第1項)。これは事件が死刑又は3年を超える懲役又は禁錮刑になるかもしれない罪を犯した少年について、どんな事件だったかを明らかにするのに必要な場合に、検察官(捜査のプロ)を関与させるという事件である。一般に重大な事件でしか検察官には関与させない。典型例は殺人事件だ。

ちなみに、14歳未満の少年の場合は「罪を犯した」ではなく「法に触れた」という。法律上の考え方では14歳未満の少年がやらかしたことは犯罪にならないからだ(刑法41条)。法に触れたことを触法(しょくほう)といい、触法した少年を触法少年という。検察官関与事件は14歳以上の少年の事件しか該当しない。

この検察官関与事件は必ず国選付添人がつく。別に検察官が少年の敵というわけではないのだが、別に味方でもない。検察官の捜査内容をチェックしたり、反論したりすることは少年には難しいので、味方の弁護士をつけましょうという趣旨だ。こうすれば少年の置かれた立場は比較的フェアになる。

このケースを必要的国選付添人選任事件という。必ず国選付添人が選任されるからだ。

裁量的国選付添人選任事件

他方、つけてもつけなくてもよいケースがある。これは家庭裁判所につけるかどうかを決める権限(裁量権限)があるので、裁量的国選付添人選任事件という。こちらがややこしい。

(1) 死刑又は3年を超える懲役刑又は禁錮になるかもしれない罪を犯した(又は触法した)少年であること。

これは検察官関与事件とほぼ同じである。ただし、触法少年も含むので注意。窃盗も10年(未遂だと5年)の懲役になるかもしれないので、3年以上の懲役になるかもしれない事件に該当する。今回の事例の傷害事件も対象ではある。

逆に対象にならない代表例は器物損壊事件だ。器物損壊だけだと刑法上3年を超える懲役刑に処せられることはない(刑法261条)。だから器物損壊事件で国選付添人がつくことはない。

(2) 観護措置がとられた少年であること。

観護措置とは、観察し保護する処分という意味である。具体的には少年がどんな少年なのか観察して、どのような再教育・保護が必要かを検討する作業である。この作業を鑑別ともいう

。少年に観護措置を行うかどうかは家庭裁判所が決める(少年法17条1項)。

観護措置は家庭裁判所調査官も行えることにはなっているが、ほぼ100パーセント少年鑑別所が行う。調査官が行う場合には国選付添人はつかない。

観護措置を取られていないケースは通常、家に帰されている。このようなケースを在宅事件といい、国選付添人がつくことはない。

(3) 既に弁護士が付添人についていないこと

少年や少年の親がお金を出したりして自力で私選付添人をつけることもできる。ただ、つけてしまうと、後から国選付添人をつけてくれとは言えなくなる。まぁ、これについては当然だろうと思う。

他方、誤解しないでほしいのは、国選弁護人がついた少年は含まない。その国選弁護人は家裁に少年が送られた時点で解任されて、法律上はなんの権限もない赤の他人になるからである。

また、弁護士ではない人間が付添人に選任されている場合も含まない。(たまに家庭裁判所が弁護士以外の人を付添人にすることがある。)

(4) 事案の内容、保護者の有無その他の事情を考慮し、弁護士をつける必要があるとき

上3つの条件はまぁ分かりやすかった。他方、この条件は裁判官によって判断が異なるファジーなものである。一般に事件が重大であればあるほど、必要があると言われやすい。また、保護者がいない事件の方が必要があると言われやすい。そのほか、急がないといけないとか、言われている事件の内容が少年の言い分と大きく異なるとかいった事情も考慮される。

まとめ

必要的国選付添人選任事件は勝手に付添人がつくから問題ない。ただ、裁量的国選付添人選任事件は、上の4つの条件を全て満たさないと付添人をつけてくれない。満たしたとしても「つけない」という判断もできる。

そして、条件(4)の判断が、裁判官によって、事件によってまちまちなので、はたから見ると「この子には付添人がいるだろ」と思わざるを得ない事件で付添人がつけられなかったりする。

そんなこんなで日本弁護士連合会は全ての少年に付添人をつけるべきだという運動を展開しており、これを全面的国選付添人制度実現運動と呼んでいる。

全面的国選付添人制度実現運動のページはこちら

実務

弁護士が初めて少年に接する機会

弁護士が少年事件の少年に初めて接する機会は大きく2つある。

1つは当番付添人といって、少年鑑別所に送られた少年が「誰でもいいから弁護士呼んで!」というケースだ。当番付添人は厳密には付添人ではない。建前上は、ただ当番だから行くだけだ。少年が当番付添人を付添人にしなければならないわけでもない。ただ、当番付添人は、とりあえず自分を国選付添人を選任してくれと家庭裁判所に申し入れることが多い。国選付添人がつくデメリットは少年にはないからだ。

2つは刑事事件段階で国選弁護人になった弁護士だ。家庭裁判所に送られた時点で解任されるが、捜査段階での事情を知っているし、少年もコロコロ弁護士が変わるよりは同じ弁護士が一貫して味方になった方が話が早いケースもあるわけで、国選弁護人になった弁護士はやっぱり「自分を国選付添人に選任してくれ」と家庭裁判所に申し入れることが多い。

申入れは当然国選付添人の選任条件を満たさなければならないが、全国的に国選付添人が選任される確率は高まっているらしい。残念なことに裁判官によっては絶対につけようとしない人もいる。おおむね弁護士が関与すると面倒なことになるので、全部自分で好きなように処理したいというタイプの裁判官があてはまる。(裏を返せば自分の仕事に対する自信のなさと見受けざるをえない。)

国選弁護人がつかなかったケース

選任条件を満たしていなかった場合、また、選任条件を満たしていてもつけないという判断になったケースではどうするか?

最後の手段として日本弁護士連合会の委託援助制度を利用することが多い。要は日本弁護士連合会がいったん費用を立て替えますよという制度だ。少年が利用するケースではよっぽどの事情がない限り「立て替えた分を返して」とはいわれない。ちなみにこの制度は法テラスの援助制度とは違うが、制度運営の事務を担当しているのは法テラスである。

追記)誤りがあったので訂正する。検察官関与事件・裁量的国選付添人選任事件の要件は長期3年を超える懲役又は禁錮刑の誤り。

また裁量的国選付添人選任事件の要件の観護措置は少年鑑別所での観護措置に限る。


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