弁護士と電話の話


他の職業でも似たようなものかもしれないが、弁護士の業務量全体中、電話が占める割合は無視できない。

電話対応は大きく3つに分かれる。

(1)依頼者対応

(2)弁護士対応

(3)その他の事務連絡

この中でも大きな割合を占めているのが(1)依頼者対応である。

(2)相手方の弁護士との対応は、お互い話すテーマを決めていて、端的に用件のみを伝えることが多いので、そんなに時間はかからない。(3)その他の事務連絡も、概ね電話の相手方は個人的な用件で電話をしているわけではなく、色々な業務上の理由で電話をかけたり、かかってきたりするわけだから、やっぱりそこまで時間はかからない(お互いさっさと終わらせようとする。)。弁護士対応と違う点は、初めてかけたりかかったりする相手が多いので、なんとなく待たされたり、話の勘所がつかめなかったりすることが多い。

逆に際限なく長いのが(1)である。仕方がない面もある。話を要領よくまとめて話すことは(弁護士にだって)簡単ではないのだ。だから依頼者が「あーでもない」「こーでもない」と色々な話に脱線したり、同じことを何度も話したり、とんでもなく些細な事実にこだわって話したり、言葉をゆっくり探しながら話したりするため、電話はどんどん長くなっていく。

個人的には話を聞くのも仕事の内だという認識でいるし、電話で済むなら面談をセッティングして話すよりも効率的だと思うので、電話はあまり遮らずに聞くことにしている。ただ、それでも長い電話が日に何度も入ると、それだけで業務時間は電話で埋まっていくことになる。弁護士の業務は電話だけではない。書類を書くことも大きな業務だ。だが、電話対応で業務時間が埋まっていくと、結局書類を書く時間がなくなる。書類を書く時間がなくなると業務時間外に書くことになる。そして休みがどんどん減っていくのである。おそらく他の弁護士も似たようなものだろう。そうやって弁護士のワーク・ライフ・バランスなるものは悪化していくことになる。

また、電話対応が他の業務に影響する理由はもうひとつある。電話は相手の都合でかかってくることが多い。そのため、他の仕事をしていようがしていまいが、お構いなしにかかってくる。電話とはそういうものだ。ホリエモンさんはこの観点から「電話してくる人とは仕事するな」と言っている。そのため、書類を書いている途中であれば手を止めなければならないし、他の弁護士と打ち合わせをしているときでも場合によっては中断を余儀なくされる。電話を後回しにすると、折返した相手がいないので、またかかってくるのを待つといったムダも発生する。いずれにせよ電話によって他の業務の効率が落ちてしまうことは言うまでもないように思われる。

そこで、弁護士のワークライフバランスを確保するには、依頼者に対する電話対応を極力へらすことが1つの方策となる。この際、重石として受け入れるべきことは、依頼者をおろそかにはできないという点である。

具体的な方策としては、

(1)なるべくメールでのやり取りに切り替える。

最近は年齢を問わずメールでのやり取りが可能になっている。メールは返信が遅すぎなければこちらのタイミングでできるので、他の業務の妨げにならない。電話のように伝えたことをメモに残す手間も省ける。ただ、返さなければならないメールが多すぎると、やはり業務としては圧迫される。

(2)なるべく事務員に対応させる。

今でこそ弁護士が事務員をおかずに業務をする例も多いが、弁護士が業務の補助として事務員をおくことは通例と言って良い。その事務員に電話対応を一定程度まかせるということも一つである。ただ、打合せや交渉事、意思確認は弁護士が直接やるべきだ。また、事務員が対応するのであれば、業務を事務員が理解していなければならないが、そのレベルの事務員というのは貴重な戦力になる。そうでなければ結局(当然だが)「後で弁護士に確認して折り返しますね。」という言葉が多くなる。これでは依頼者にも失礼だろう。

(3)なるべく話を打ち切る。

「申し訳ないが何時までしか電話ができない。」と前置きして話を聞く。とても忙しいときにはこういう方法をとることもある。ただ、依頼者にとってはあまりうれしくないだろうと思う。焦って話ができなくなってしまう依頼者もいる。「今その話はおいときましょう。」とか「裁判所はあまり気にしないと思いますよ。」と話を終えるよう促すこともある。

(4)移動中に電話をかける。

移動中に電話をかける。例えば最近はハンズフリー機能を使って車の中で携帯を操作せずに電話をかけられるようになった。これはかなり便利だ。ただこれをメモすることができない。そのため、重要な話をするときに移動中の電話であるということのデメリットが出てくることになる。

(5)単価を上げる・タイムチャージ式にする

1人の依頼者に対する電話の量を減らす方法は、色々と考えられるが、どれも依頼者対応に難が出てきてしまう。そうすると、依頼者対応を丁寧にするためには、現実的に依頼者1人あたりの依頼料を上げることで、依頼者の数を減らしながら、同水準の収入を確保するという道をとらざるを得なくなる。また似たような方針として、タイムチャージ式にすることも考えられる。電話対応の時間を計測して、電話対応にかけた時間あたりの報酬として算定するわけだ。電話が長い依頼者には多くの負担が、短い依頼者には少ない負担でということは一見すると公平にも思える。ただ、長々としか喋れない人は概ね高齢や障害の影響が出ているわけで、そんな人ほど高くなる料金設定というのも、心のどこかがなんだかなぁと言っている。

そもそも弁護士費用を上げるということは、かなり勇気がいることでもあるのだ。

 

このように、色々と考えた挙げ句、今日も結局たくさんの電話を受けながら、たくさんの話を聞き、夜書類を書き上げるという生活を送るのである。


弁護士と電話の話」への1件のフィードバック

  1. フォローありがとうございました。
    依頼者の要領得ない話を聞くのは拷問のような辛さではないかと思うことはあります。
    離婚の弁護士さんとかは特に大変そうです。
    まあ、それが仕事だからと言う先生もいますが。

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