自衛隊機がアフガンから邦人を退避させるべく出発


アフガニスタンへの自衛隊機派遣

アフガニスタンはタリバンによって首都を含む大半の地域が制圧された。

事実上、アフガニスタンの政権はタリバンが担うことになった。

しかし、各地で難民化、デモ、反タリバン勢力の決起等が相次いでいる。

今後、アフガニスタンは再び内戦に陥る可能性が高そうである。

 

そのような中、8月23日午前に、日本政府はアフガニスタンにいる日本人らの退避のために自衛隊機を派遣することを決めた。

治安が大きく悪化しているアフガンから日本人らを救い出すための派遣だ。

日本人らには日本人と日本大使館で働いていたアフガニスタン人も含むらしい。

 

一時的な派遣で、また救助目的とはいえ、自衛隊機の海外派遣である。

個人的には法的根拠はどのようなものなのだろうか気になったので、少し調べてみた。

内容に間違いがあるかもしれないし、とんちんかんな懸念を表するかもしれない。あらかじめ謝っておく。

1 自衛隊法の定め

報道によると、自衛隊機派遣の法的根拠は自衛隊法84条の4だそうである。

長いがとりあえず全文引用する。

第八十四条の四 防衛大臣は、外務大臣から外国における災害、騒乱その他の緊急事態に際して生命又は身体の保護を要する邦人の輸送の依頼があつた場合において、当該輸送において予想される危険及びこれを避けるための方策について外務大臣と協議し、当該輸送を安全に実施することができると認めるときは、当該邦人の輸送を行うことができる。この場合において、防衛大臣は、外務大臣から当該緊急事態に際して生命若しくは身体の保護を要する外国人として同乗させることを依頼された者、当該外国との連絡調整その他の当該輸送の実施に伴い必要となる措置をとらせるため当該輸送の職務に従事する自衛官に同行させる必要があると認められる者又は当該邦人若しくは当該外国人の家族その他の関係者で当該邦人若しくは当該外国人に早期に面会させ、若しくは同行させることが適当であると認められる者を同乗させることができる。
2 前項の輸送は、第百条の五第二項の規定により保有する航空機により行うものとする。ただし、当該輸送に際して使用する空港施設の状況、当該輸送の対象となる邦人の数その他の事情によりこれによることが困難であると認められるときは、次に掲げる航空機又は船舶により行うことができる。
一 輸送の用に主として供するための航空機(第百条の五第二項の規定により保有するものを除く。)
二 前項の輸送に適する船舶
三 前号に掲げる船舶に搭載された回転翼航空機で第一号に掲げる航空機以外のもの(当該船舶と陸地との間の輸送に用いる場合におけるものに限る。)
3 第一項の輸送は、前項に規定する航空機又は船舶のほか、特に必要があると認められるときは、当該輸送に適する車両(当該輸送のために借り受けて使用するものを含む。第九十四条の六において同じ。)により行うことができる。

2 84条の3第1項前段

84条の3第1項前段を分析してみよう。

(1)防衛大臣は、
(2)外務大臣から外国における災害、騒乱その他の緊急事態に際して生命又は身体の保護を要する邦人の輸送の依頼があつた場合
(3)当該輸送において予想される危険及びこれを避けるための方策について外務大臣と協議し、当該輸送を安全に実施することができると認めるとき、
(4)当該邦人の輸送を行うことができる。

となっている。

タリバンによるアフガニスタンの政権獲得、それに引き続く混乱は外国における騒乱で緊急事態といって差し支えないだろう。

武装勢力同士の衝突も予想される中、アフガニスタンにいる日本人は「生命又は身体の保護を要する邦人」といえるだろう。

輸送を安全に行えるかどうかという問題は微妙なところではあるが、今のところカブール空港から飛び立つ飛行機が撃墜されたような事情はないし、空港からの輸送は死なない程度に安全に行えるのだろう。(さすがにタリバンも今外国勢力の介入を受けるのは得策ではないと理解してくれるはず。)

とすると自衛隊法84条の4第1項前段に基づき、日本人をアフガニスタンから輸送すること自体は法的に問題なさそうである。

 

3 同項後段

同項後段は「この場合において」とあるから前段の補足だ。

何が書かれているのだろう。

(1)防衛大臣は、

(2)次のいずれかにあたる者は
 (a) 外務大臣から当該緊急事態に際して生命若しくは身体の保護を要する外国人として同乗させることを依頼された者、
 (b) 当該外国との連絡調整その他の当該輸送の実施に伴い必要となる措置をとらせるため当該輸送の職務に従事する自衛官に同行させる必要があると認められる者
 (c) 当該邦人若しくは当該外国人の家族その他の関係者で当該邦人若しくは当該外国人に早期に面会させ、若しくは同行させることが適当であると認められる者
(3)同乗させることができる。

要は、日本人以外の人を輸送できる場合を規定しているようだ。

今回も日本大使館で働いていたアフガニスタン人を輸送するとのことだったが、おそらく「外務大臣から当該緊急事態に際して生命若しくは身体の保護を要する外国人として同乗させることを依頼された者」なのだろう。

日本のために働いてくれた外国人なので保護すべきなのは十分理解できる。

 

4 84条の4第2項

どのように輸送するかが書いているのが第2項。
原則:前項の輸送は、第百条の五第二項の規定により保有する航空機により行うものとする。
例外:
(1)当該輸送に際して使用する空港施設の状況、当該輸送の対象となる邦人の数その他の事情によりこれによることが困難であると認められるとき、
(2)次に掲げる航空機又は船舶により行うことができる。
 (a) 輸送の用に主として供するための航空機(第百条の五第二項の規定により保有するものを除く。)
 (b) 前項の輸送に適する船舶
 (c) 前号に掲げる船舶に搭載された回転翼航空機で第一号に掲げる航空機以外のもの(当該船舶と陸地との間の輸送に用いる場合におけるものに限る。)

これを読むと、輸送は自衛隊法100条の5第2項に書かれた航空機で行うのが原則のようだ。

この航空機というのが

第百条の五 防衛大臣は、国の機関から依頼があつた場合には、自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度において、航空機による国賓、内閣総理大臣その他政令で定める者(次項において「国賓等」という。)の輸送を行うことができる。

2 自衛隊は、国賓等の輸送の用に主として供するための航空機を保有することができる。

なので、VIPを運ぶ飛行機で運ぶのが原則ということか。

この航空機はいわゆる政府専用機(2機ある)なのだろうが、こちら一般客室の定員が89人らしい。(全部で150人は乗れるらしい。)

(参考:政府専用機:https://www.mod.go.jp/asdf/equipment/yusouki/C-2/index.html)

 

ただ、今回はボーイングの政府専用機ではなく、C-130(通称:ハーキュリーズ)を2機、C2を1機使用するそうである。

航空自衛隊のHPによると、C-130もC2も定員約100人ぐらい。操縦士や警護の人員を輸送する日本人等から引かなければならない。

(参考:C-130:https://www.mod.go.jp/asdf/equipment/yusouki/C-130H/index.html

C-2:https://www.mod.go.jp/asdf/equipment/yusouki/C-2/index.html

一気に3機着陸させるわけにもいかないだろう。

 

加藤官房長官は安全確保の観点から具体的に何人の在留邦人がいるのかを明らかにしていない。

また、アフガニスタン人をどの程度輸送するかも明らかにしていない。

単純計算だと政府専用機の方がたくさん運べそうな気もするが……、武装勢力がいることを考えると自衛隊機のほうが何かと都合は良いのかもしれない。

そこで、「輸送の用に主として供するための航空機(第百条の五第二項の規定により保有するものを除く。)」としてC-130やC-2が利用されるのだろう。

5 3項

3項の定めも輸送方法の定め。
(1)第一項の輸送は、
(2)特に必要があると認められるときは、
(3)当該輸送に適する車両(当該輸送のために借り受けて使用するものを含む。第九十四条の六において同じ。)により行うことができる。

とあるので、陸路での輸送も考えているわけだ。

もしかすると今回も車両を一緒に運んでいるのだろうか。

6 武器の使用について

邦人等の輸送に関して、一定の場合には武器の使用が許される。

第九十四条の六 第八十四条の四第一項の規定により外国の領域において同項の輸送の職務に従事する自衛官は、当該輸送に用いる航空機、船舶若しくは車両の所在する場所、輸送対象者(当該自衛官の管理の下に入つた当該輸送の対象である邦人又は同項後段の規定により同乗させる者をいう。以下この条において同じ。)を当該航空機、船舶若しくは車両まで誘導する経路、輸送対象者が当該航空機、船舶若しくは車両に乗り込むために待機している場所又は輸送経路の状況の確認その他の当該車両の所在する場所を離れて行う当該車両による輸送の実施に必要な業務が行われる場所においてその職務を行うに際し、自己若しくは自己と共に当該輸送の職務に従事する隊員又は輸送対象者その他その職務を行うに伴い自己の管理の下に入つた者の生命又は身体の防護のためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる。ただし、刑法第三十六条又は第三十七条に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない。

内容を分析すると

(1)外国の領域で在外邦人等の輸送の職務に従事する自衛官は、
(2)次のいずれかの場所において
(a)当該輸送に用いる航空機、船舶若しくは車両の所在する場所、
(b)輸送対象者(当該自衛官の管理の下に入つた当該輸送の対象である邦人又は同項後段の規定により同乗させる者をいう。以下この条において同じ。)を当該航空機、船舶若しくは車両まで誘導する経路、輸送対象者が当該航空機、船舶若しくは車両に乗り込むために待機している場所
(c)輸送経路の状況の確認その他の当該車両の所在する場所を離れて行う当該車両による輸送の実施に必要な業務が行われる場所
(3)その職務を行うに際し、
(4)自己若しくは自己と共に当該輸送の職務に従事する隊員又は輸送対象者その他その職務を行うに伴い自己の管理の下に入つた者の生命又は身体の防護のためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合、
(5)その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる。
(6)ただし、刑法第三十六条又は第三十七条に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない。

刑法36条、37条は次のとおり

(正当防衛)
第三十六条 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
2 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
(緊急避難)
第三十七条 自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
2 前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。

カブール空港で不測の事態が生じた場合、自衛官が武器を使用することもありうるというわけだ。

6 半島有事や台湾有事の際の邦人保護

朝鮮半島や台湾で武力衝突等が生じた場合、アフガニスタンの比ではない邦人輸送が要求されることになる。

しかも日本も紛争当事国になっているか、なってしまうおそれがあるなかでの作戦になるだろう。

人数が多い場合には、船での移送もありうるのだろうか。


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