アニメSchoolDaysのネタバレがあるので(一応)注意。
この記事ではスクールデイズの教室シーンの元ネタをまとめている。
スクイズでは第6話まで教室のシーンが何箇所か出てくる。
現代文や古文、世界史の授業と思われる。
シーン中、教員や生徒が読み上げている文章には元ネタがある。
その元ネタを知っていれば、作品の方向性を暗示する重要な伏線となっていることがわかる。
第1話
前半の教室のシーンで教員が読み上げているのは古文。原典は四谷怪談。
「今をも知れぬ此岩が、死なばまさしく其娘、祝言さするは是眼前。たゞうらめしきは伊右衛門殿。喜兵衛一家の物共も、何あんをんに、有べきや。思へば思へば。ヱヽ、うらめしい。」
お岩が夫である伊右衛門に裏切られたことを知った直後の独白である。
お岩がこのあと伊右衛門をどうするかは周知のとおりである。School Daysの結末を暗示するものである。
日本文学ガイド:https://koten.sk46.com/sakuhin/kaidan.html(R2.12.27閲覧)
後半の教室のシーンで教員が読み上げているのは原典は不明だが、男装の麗人と呼ばれた川島芳子のこと。
川島芳子は戦前の大日本帝国工作員。中華民国が戦後に銃殺刑にした。
伊藤誠への思いを隠しながら、桂言葉の身辺を探る、西園寺世界の役回りはスパイのようである。工作対象から殺されるというのも川島芳子とかぶる。
ちなみに川島芳子が情報を提供していた大日本帝国も、伊藤真と同じように破滅した。
川島芳子のWikipedia記事:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%9D%E5%B3%B6%E8%8A%B3%E5%AD%90(R2.12.27閲覧)
第4話
後半、世界と誠の教室で、教員が朗読しているのは森鴎外のヰタ・セクスアリスの一節。
「それから古賀が歩きながら探険の目的を話した。安達が根津の八幡楼という内のお職と大変な関係になった。女が立て引いて呼ぶので、安達は殆ど学課を全廃した。」
説明すると次のことを説明する段である。
ヰタ・セクスアリスの主人公金井にはルームメイトの古賀がいた。
古賀は安達という美少年を可愛がる硬派な学生である。
ところが安達は遊郭の女に夢中になってしまい、古賀の下を去って、学業でも落ちぶれてしまい、ついには学歴エリートコースから転落してしまう。
古賀が言葉、遊郭の女が世界、安達は誠の隠喩だろう。
他方、後半、言葉の教室で教員が朗読しているのは、これまた森鴎外の作品である。
こちらは教科書にも載っていた舞姫。
主人公豊太郎が親友相澤からの勧めで恋人エリスのことを捨てようと思って出張に出ていくシーンである。
当然、豊太郎が誠、親友相澤が世界、エリスは言葉の隠喩である。
このあとエリスの妊娠が発覚して豊太郎はますます別れを言い出しにくくなるが、相澤がエリスに全てを告げてしまい、エリスは発狂し、最低な結末へと進んでいく。
第6話
前半の教室のシーンの朗読は林芙美子の泣虫小僧の一節。
「啓吉は賑やかな町へ来た事がうれしかった。路地を抜けると、食物の匂いのする商店が肩を擦り合うようにして並んでいる。」
泣虫小僧は母親にうとまれて親戚の内に半ば捨てられたように預けられる啓吉という子どもが主人公の悲しい話である。
朗読されている一節は、まだそんなこととは知らずに啓吉が叔父さんと他愛もない話をする節の冒頭である。
まるで裏切られたことを知らない啓吉が言葉、裏切った母親が誠、裏切りに加担しつつ啓吉を不憫に思っている叔父さんが世界の暗喩である。
なお、啓吉は辛酸をなめたあと、最後トラックに引かれて意識が遠のいていく。
この描写で泣虫小僧は終わり。
死んだとも、助かったとも書かれていない。
なお最終回の言葉を彷彿とさせる。
青空文庫のページ:https://www.aozora.gr.jp/cards/000291/card3220.html
続いての世界史の授業で紹介されているのは荀子。
中国の思想家で性悪説で有名。「人の性は悪なり、その善なるものは偽なり。」と説く。
ここで「悪」というのは「弱い」と読み替えて良いそうだ。
人は弱い生き物で、後天的に礼儀等を身に着けていく努力で強くなるという思想と紹介される。
全く、誠や世界を見ていると人は弱い生き物という言葉がしみる。
荀子のWikipediaのページ:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8D%80%E5%AD%90