自由民主党の参議院議員である赤池誠章が意味不明な言動をしてTwiiterを騒がせている。
問題となった言動はこちらのブログから。
「司法試験結果公表 受験者4千人を切って法曹離れ止まらず 法曹養成改革の「改革」はこれから」
支離滅裂な箇所が多いのでざっくり指摘しておく。
「法曹離れ」という言葉の誤用
当該記事は司法制度改革が目標としていた法科大学院修了者の司法試験合格率7~8割という目標が未達成であることから、
「法曹離れに歯止めがかかっていません。」
と指摘している。
法曹になろうとしない人が増えているなら「法曹離れ」という言葉で良いだろう。しかし、赤池議員が指摘している合格率の問題は法曹になりたくてなれない人が多いという意味なので「法曹離れ」というのはいかがなものか。受験者数の問題と合格率の問題を混同しているのではないか。
「若者の車離れ」とは「車を買いたい若者が大勢いるが、買えない」という状態ではないのである。単に「車はいらない」というだけの話だ。
確かに法曹を目指す者は減っている。
ともあれ、確かに法曹を目指す者は減っている。
赤池議員の文章もこの限りでは間違いない。
そして、その原因が
①経済的負担の大きさ(26.5%)
②司法試験合格率の低さ(25.1%)
③時間的負担の大きさ(23.2%)
であるというのも②以外は私は賛同する。
②については法科大学院ルートを選ばない理由にはなっても、予備試験ルートを選ばない理由にはならない。
そもそも法科大学院ルートが用意されるまでの時代、つまり旧司法試験の時代は今よりもっと合格率が低かった。
司法試験合格を目指さない者が増えているのは司法試験合格率の低さ故ではない。
①、③については理解できる。特に①の影響が大きいだろう。
で、なんでそうなるの?
加えて、このような原因分析の下、平成30年に改革が行われたのも事実である。
赤池議員も「早期卒業・飛び入学の拡充、学部と法科大学院の連携強化、未修者・社会人の志願者に対する配慮等の連携法等改正」といった改革内容を指摘している。
しかし、その最後に次のような文言を加筆したことの意味がわからない。
法務省はもちろん、裁判所や弁護士会、そして、文部科学省も含めて、法曹離れに歯止めをかけるべく、対策強化をお願いしたいと思います。
そのためには、検事は公益のために起訴を行い、裁判官は一部原発判決のような偏向した判決を出さず、弁護士は反政府的な活動をせず、コロナ禍の中で差別や偏見から関係者を守る等、国民の期待を担って、国家・社会での活躍を期待したいと思います。(下線部・太字は引用者)
「そのために」で繋げているということは、「検事が公益に反する起訴を行い、裁判官が偏向した判決を出しており、弁護士が反政府的な活動をしている」という事実が存在しなければならない。そして、これらの事実と法曹を目指す者が減っている事実とが因果関係で結ばれていなければならない。
事実が存在するかどうかは評価の問題もあるので脇におく。問題は全く因果関係で結ばれていない点である。
ついさっき、
①経済的負担の大きさ(26.5%)
②司法試験合格率の低さ(25.1%)
③時間的負担の大きさ(23.2%)
が原因であると言っていたのに、全く別の原因を突如として指摘することは全く論理的ではない。
加えて、そのような自民党の意に沿わない言動が法曹に多いとして、それは法曹になってからの話であるから、志望者が法曹になるかならないかの段階には関係がない。
(むしろ反政府的な言動をしたいから法曹になった人間などほとんどいないだろう。)
要するに支離滅裂な言動としか言いようがないのである。
なぜこのような支離滅裂な言動になるのか
どうして「選良」とも呼ばれ自民党の文部科学部会長までしている国会議員がこのような言動に出たのか。
要はこの議員が、自民党の議員として、「桜を見る会」での安倍前首相の立件や、その他の議員に対する相次ぐ起訴、原発推進の立場に反する司法判断、色々な政策に対して弁護士会から出される反対意見の数々に苛立っているだけの話だと思う。
「国民の期待を担って、国家・社会での活躍を期待したいと思います。」という議員の言葉は「自民党の期待に沿うように頑張れ」と読み替えるとすっきりする。
私はまっぴらごめんである。