短答式試験問題集[ハンムラビ法典]
[ハンムラビ法典]
[第1問](配点:3)
裁判手続に関する次のアからウまでの各記述について、正しい場合には1を、誤っているも場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからウの順に[No.1]から[No.3])
ア.甲が乙を殺人で告発したにもかかわらず、告発内容を立証できなかった場合、必ず甲は死刑に処される。[No.1]
イ.甲が乙が魔術を使ったと告発したにもかかわらず、告発内容を立証できなかった場合、必ず甲は死刑に処される。[No.2]
ウ.甲が法廷での証言内容を立証できない場合、必ず甲は死刑に処される。[No.3]
正答
[No.1]1 正しい。(第1条)同害報復について規定した有名な条文の一つ。必ず正答したい。
[No.2]2 告発内容が立証できない場合、被告発者が河に飛び込まなければならないところ、被告発者が溺れ死んだ場合には、告発者は死刑に処されないので誤り。(第2条)いわゆる神明裁判である。なお、容疑をかけられた被告発者は縛ったまま水中に投げ込まれる。無実であれば河の神が助けるから問題ない。
[No.3]2 人の生死に関わる訴訟の場合に、偽証は死刑に処されるので誤り。(第3条)
[第2問](配点:3)
財産犯に関する次のアからウまでの各記述について、正しい場合には1を、誤っているも場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからウの順に[No.4]から[No.6])
ア.甲が宮廷の豚を盗んだ場合、必ず甲は10倍の豚を賠償しなければならない。[No.4]
イ.甲が自由人の子どもから奴隷を預かっただけの場合、甲が死刑に処されることはない。[No.5]
ウ.甲が自由人の子どもから奴隷を購入した場合、必ず甲は死刑に処される。[No.6]
正答
[No.1]2 10倍ではなく30倍なので誤り。10倍はムシュケーヌム(注:自由民(アウィールム)と奴隷の中間的な階層)から盗んだ場合である。(第8条)
[No.2]2 自由民の子どもから、証人や契約書のない寄託を受けた場合、死刑に処されるので誤り(第7条)
[No.3]2 証人や契約書のある購入の場合、死刑に処されないので誤り。(第7条)
[第4問](配点:3)
財産犯に関する次のアからウまでの各記述について、正しい場合には1を、誤っているも場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからウの順に[No.7]から[No.9])
ア.甲が乙の子どもを盗んだ場合、甲の子どもを殺さなければならない。[No.7]
イ.乙(ムシュケーヌム)から逃げ出してきた奴隷を自分の家に匿った甲は、伝令官から乙の奴隷の引渡命令を出された場合でも、甲の奴隷を乙に引き渡すことで処罰を免れる。[No.8]
ウ.甲が宮廷の奴隷を都市の外に逃亡させた場合、甲は死刑に処される。[No.9]
正答
[No.7]2 甲の子どもではなく、甲が死刑に処されるので誤り。(第14条)ちなみに、子どもの誘拐は、その子どもを奴隷として売り飛ばすことが目的とみなされる。
[No.8]2 甲が引渡命令に従わない場合、甲は死刑に処されるので誤り。(第16条)ちなみに、伝令官は直訳すると「大声警告官」。つまり大声で命令を叫ぶ役人。
[No.9]1 正しい。(第15条)奴隷は都市の城郭の内部でかなり厳重に行われていた。
[第5問](配点:3)
土地の賃貸借に関する次のアからウまでの各記述について、正しい場合には1を、誤っているも場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからウの順に[No.10]から[No.12])
ア.甲が乙の土地を果樹園にするために借りた場合、乙は、5年目から果樹園の収穫の分配を受ける権利を得る。ただし、この土地が、借りた時点で耕地でなかったものとする。[No.10]
イ.甲が乙の土地を果樹園にするために借りたにもかかわらず、甲がこれを果樹園にしなかった場合、乙は、近隣の果樹園を基準に、甲に果実の分配を請求することができる。ただし、この土地が、借りた時点で耕地だったものとする。[No.11]
ウ.甲が乙の耕地を借りて賃料を収穫物で支払う契約をしていた場合にあって、賃料が支払われてから全ての収穫物を収穫するまでの間に、神が畑を押し流した場合、乙は甲から受け取った収穫物の半分を甲に返さなければならない。[No.12]
正答
[No.10]1 正しい。(第60条)ここでいう果樹はナツメヤシなど。
[No.11]2 近隣の耕地を基準に算定された収穫量に応じて、収穫物を請求することができるので誤り。(第62条)
[No.12]2 乙は一切収穫物を返還する義務を負わないので誤り。(第45条)
[第6問](配点:5)
次の対話は、ハンムラビ法典の制定目的に関する自由民甲(教師)と自由民乙(学生)の対話である。空欄アからオに入る言葉を、後記の選択肢の中から選びなさい。(解答欄は、アからオの順に[No.13]から[No.17])
甲.[ ア ]神は、町々の諸王の君主たるハンムラビ様をこの国に派遣した。それは何の目的か。
乙.国土において正義を実現するために、[ イ ]を殺戮するために、強者が弱者を[ ウ ]するためにといった目的です。
甲.そのような目的を実現するために、ハンムラビ様はハンムラビ[ エ ]と名付けられた。そのように名付けたのは天地の主で国土の運命の決定者である[ オ ]神である。
1.アン 2.エンリル 3.エア 4.マルドゥク
5.異国の民 6.悪漢と虫けら 7.魔術師 8.悪魔
9.牧者 10.教授 11.尊父 12.園丁
13.支配 14.豊かに 15.虐げないように 16.教育
正答
[No.13]アは4(マルドゥク)
[No.14]イは6(悪漢と虫けら)
[No.15]ウは15(虐げないように)
[No.16]エは9(牧者)
[No.17]オは2(エンリル)
以上はハンムラビ法典序文より。
参考文献
佐藤信夫「古代法の翻訳と解釈(1) : ハンムラピ法典の石柱に刻まれた楔形文字全文の原典その翻訳および解釈の方法について」山梨学院大学法学論集、巻 47, p. 98-354, 2001年。