あおり暴行事件の宮崎文雄をかくまったとして、通称ガラケー女こと喜本奈都子が犯人隠匿罪で逮捕された。犯人隠匿罪とはどのような罪だろうか?
犯人隠匿(はんにんいんとく)罪
刑法103条には次のような条文がある。
(犯人蔵匿等)第百三条 罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
簡単に言えば犯人を警察から隠したり逃がしたりする罪である。
「罰金以上の刑にあたる罪を犯した者」
大抵の犯罪者が該当する。
1つの例外は軽犯罪法である。軽犯罪法違反は拘留または科料の罰が与えられる。これらは罰金よりも軽い刑罰である(刑法10条1項、9条)。だから、軽犯罪法違反者は「罰金以上の刑にあたる罪を犯した者」ではない。
だから、軽犯罪法違反者をかくまっても別に犯人隠匿罪で捕まることはない。
「拘禁中に逃走した者」
拘禁とは逮捕・留置・勾留のことを指す。要は捜査のため行われる身体拘束のことだ。例えば逮捕されれば2日間ぐらい留置所にぶち込まれるが、ここから逃走したりすると「拘禁中に逃走した者」に該当する。
「蔵匿」又は「隠避」
蔵匿(ぞうとく)の「匿」は「かくまう」という字だ。これは見つからないように隠してあげることを指す。
なお、「蔵」は「倉庫」の意味があるが、別に倉庫だけでなく、普通の部屋、車、ホテル等にかくまっても蔵匿にあたる。
隠避(いんぴ)は「隠して避けさせる」という意味だ。つまりこっそりと逃がしてあげることを指す。
例えば犯人に飛行機のチケットを渡して逃走を助けることなどを指す。
蔵匿と隠避をあわせて「隠匿」という。そこで、犯人蔵匿罪と犯人隠避を犯人隠匿罪というのである。
まとめ
大抵の犯罪者を警察から見つからないように隠してあげた場合には犯人蔵匿罪に問われると考えて良い。
喜本被疑者の場合、指名手配されていた宮崎容疑者をマンション一室にかくまい、生活させていたために、この罪の疑いがかけられているのである。
犯人隠匿が罪にならない場合
ところが犯人隠避罪には例外がある。
刑法105条にその例外が書かれている。
第百五条 前二条の罪については、犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる。
犯人が自分の利益のために逃げ隠れした場合には、犯人が犯人隠匿罪には問われない。
犯人が逃げ隠れするのは普通のことで、取り立てて罰する意味がないからだ。(逃げれるものなら逃げるのが普通)
また、犯人の親族が犯人をかくまうことも、刑法上は普通のことで、これを罰さないこととされている。親族には親族の愛情があってそのことは理解できる。そのような「逃がせるものなら逃がしてやりたい。」という気持ちを法は罰さないのだ。
親族の定義は民法に書かれている。
第七百二十五条 次に掲げる者は、親族とする。一 六親等内の血族二 配偶者三 三親等内の姻族
だから、孫(2親等)、甥姪(3親等)などはかくまっても罪に問われない。
今回捕まった喜本被疑者は宮崎被疑者の交際相手だったそうだ。交際相手は親族ではないので、刑が免除されない。万一結婚していれば配偶者として犯人隠匿罪に問われることさえなかったのだ。
そうすると喜本容疑者を何らかの罪で罰することは難しくなっていただろうと思う。