茨城あおり運転暴行事件 自首って何?


茨城などで煽り運転を繰り返した上に、被害者を殴るってケガをさせた宮崎文雄が大阪で逮捕された。

被害者のドライブレコーダーに暴行の様子が録画されていた。録画がニュースで全国に放送され、宮崎容疑者の異常性でネットはおおいに盛り上がった。

自首について

一部「宮崎、早く自首しろ!」などといったコメントが見られたが、これは自首を誤解している。

刑法42条1項にはこうある。

罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。

自首が認められるタイミング

自首は「捜査機関に発覚する前に」行わないと法律上は意味が無い。

何が発覚する前かというと、

  1. 犯罪が行われたことの発覚前
  2. 犯人が誰かが発覚前

ということになっている。(最判昭和24年5月14日)

だから、例えば警察から逃げ回っていた犯人が観念して警察署に来ても自首ではない(これは単なる出頭)。

今回のあおり運転は既に捜査によって宮崎がやったことは警察にも分かっていただろうから、犯人が早い段階で発覚したといえる。だから、報道の後、宮崎がすぐに出頭しても自首が成立することはまずなかっただろうと思う。

自首の方法

これは刑事訴訟法245条、241条に書いている。

原則、書面(手紙)又は口頭で、巡査部長以上の階級の警察官司法警察員)か検察官に「自首しにきました。」という必要がある。

例外はあるがややこしいので、最寄りの警察署に行けば自首できると覚えておくと良い(?)

なお、自分で行くのが怖い場合には、(あとからどうせ捕まるが)、他人を介して自首することもできる(最判昭和23年2月18日)。

自首の効果

罰が軽くなる確率が高くなる。犯人が逃げ回ったり、罪を否定したりすると、捜査に沢山の時間がかかる。自首してくれたら捜査機関は多少楽になるので、裁判所がご褒美に罰を軽くできるのである。ただ、必ず軽くしてくれるわけではない。例えば警察に気がつかれずに50人殺した人間が自首しても、現行法では死刑は免れないだろう。

必ず軽くしてくれるわけではないので、自首した方がいいのか、黙っていた方が良いのか迷う例は実際あるのだろう。

なお、非常に特殊な例外がある。内乱予備罪、内乱陰謀罪、内乱幇助罪、私戦予備罪、私戦陰謀罪(刑法78条、79条、93条)である。

国家権力を転覆させるために暴動を計画したり(内乱陰謀)、準備のために爆弾を作ったり(内乱予備)、準備を手伝ったりする(内乱幇助)ことは犯罪である。それに、ひとたび内乱を起こされると、社会にとんでもないダメージが発生する可能性がある。そこで、刑法では内乱のリーダーに死刑か無期禁固という極めて重い刑罰を用意しつつ、「自首したら絶対に罰を与えない(刑を免除する)」と決めている。自首した方が絶対にお得なのである。とはいえ、内乱を起こすなんてほぼほぼ無理だが。(まじめに(?)内乱を考えてたグループなんて過激派かオウム真理教ぐらいのもんだろう。)

私戦予備罪や私戦陰謀罪は、外国と戦争しようと計画したり、準備したりする罪である。法学部生の頃は「そんなやつおらんやろ」と思っていたが、少し前にシリアで戦おうとした北海道大学生がいて驚いた。自首していれば内乱罪と同じく絶対に罰は与えられなかったのにと思うが・・・。まあ、どうでもいいわ。

自首は成立しなくても、正直に警察に出頭したほうがいい理由

「もう警察にバレてるから逃げよう」とかは思わない方が良い。

確かに自首は成立しないだろうが、自首にはならなくても情状によって罰を軽くしてくれる可能性はまだ残されている。

悪いことをしてしまった人は、正直に、積極的に、警察官にいうことが後々のためである


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