刑事事件における「弁論」とは


「弁論」というと中学校の頃にやった弁論大会とかディベート大会のようなものをイメージするだろう。一般的に弁論とは、自分の言いたいことをうまく表現ための方法論や表現そのものを指すことが多い。世界史で習う古代ローマの大キケロも弁論家として知られる。彼の著作に「弁論について」という本があるくらいだ。

ただ、日本の法律家達の間で「弁論」という言葉はもう少し違った意味を持つ。

 

刑事事件の裁判が進んでいって、証拠も出そろったとき、検察官が「この被告人は有罪なんです! 刑務所に入れてください。」と、反対に弁護人が「この被告人は無罪なんです。」とか「この被告人を刑務所にいれるのはやめてください。」などと、また被告人が「もうしません。許してください。」と裁判官に意見を述べる手続がある。

ちょっと法律の文言を見てみよう。

刑事訴訟法293条

第1項 証拠調が終った後、検察官は、事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならない。

第2項 被告人及び弁護人は、意見を陳述することができる。

第1項に書かれているとおり、検察官は必ず意見を述べなければならない。検察官が「特に何も言うことはありません。」などという態度をとることは許されない。

他方、被告人や弁護人は意見を述べないことができる。ただし、弁護人が意見を述べずに裁判を終わらせることは通常、弁護士倫理上、許されない。そんなことをしていたら弁護士なんていらないからだし、被告人がきちんと弁護されているか怪しくなってしまう。だから、弁護人も原則として必ず意見を述べなければならないことになっている。

 

この最終的な意見をそれぞれの登場人物で呼び方を変えて、検察官の最終意見のことを「論告求刑」、弁護人の最終意見のことを「弁論」、被告人の最終意見のことを「最終意見陳述」と呼ぶことが多い。

 

なので、法律家の間で「弁論」といえば、刑事事件の最後の方で被告人の味方をしている弁護士が述べる意見のことだな、と思うのである。


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