国旗損壊罪を制定してまで守らなければならない我が国の名誉(笑)について


自民党の高市早苗前総務相ら「保守団結の会」が、日の丸を傷つける行為を処罰できる「国旗損壊罪」を盛り込んだ刑法改正案を今国会に議員立法で提出したいと同党の下村幹事長に申し入れた。

以下、国旗損壊罪の成立に反対の立場から、問題点を指摘する。

経緯

まず経緯から。

刑法には外国の国旗を損壊した場合に処罰する規定がある。

(外国国章損壊等)
第九十二条 外国に対して侮辱を加える目的で、その国の国旗その他の国章を損壊し、除去し、又は汚損した者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪は、外国政府の請求がなければ公訴を提起することができない。
日の丸(日章旗)は壊しても処罰されない。もちろん他人の物なら器物損壊罪、日の丸を燃やして危険を生じさせたら放火関係の罪や軽犯罪法に問われる可能性はある。
なぜ日の丸が処罰されないのかは後述するとして、これに不満を抱いた保守層がいることは不思議ではない。
そこで、平成24年5月にも自民党は「日本国を侮辱する目的で国旗を損壊、除去、汚損した者」に2年以下の懲役または20万円以下の罰金を科す内容の国旗損壊罪の創設が提案した。
こちらは法案として提出されたが、選挙の関係で廃案となっている。

高市早苗はこのときも法案提出に関与している。

同年11月に自民党が公表した政権公約には国旗損壊罪の創設が掲げられている。
以上のことから、保守団結の会が国旗損壊罪について突然言い始めたわけではない。以前から似たような動きが自民党全体の動きとしてあった。
なお、日本弁護士連合会は会長声明で、平成24年に刑法の一部を改正する法律案(国旗損壊罪新設法案)に関する会長声明を出している。

なぜ今なのか

このコロナ禍という国難の最中にあって、「国旗を壊した人は日本の名誉を害する。」などと騒いでいる事自体が呑気というか、地に足のついていない議論が好きな人達だなぁと思う。

いかに経済を回すか、いかに生活を救うか、いかにコロナ患者を減らすかを一丸となって検討している中で空気が読めないと言われても仕方がないだろう。

この点、野党だって「モリカケサクラ」とコロナ以外のどうでもいい話をしているじゃないかと言われるかも知れない。一部賛同したい気持ちもある。

しかし、野党が騒いでいるのは、自民党政権は金で政策判断が歪んでしまう恐れがあり、コロナ禍の政権としてふさわしくないという話をしている。コロナ問題と全く無関係というわけではない。

他方で、「国旗は大事にしませんと~」などという主張は道徳的かもしれないが、「今その話ししていない」、「すべきでない」、「どうでもいい話」と言わざるをえない。

保守団結の会の短期的な狙いはなにか?

おそらく、今年予定されている衆議院議員選挙の政権公約に盛り込むために、今から動いているというのが1つ。

あと、コロナコロナで保守的な話ができない不満のガス抜きというのも1つ。

あと、高市早苗が存在感を出したいというのもあるだろう。元々、保守団結の会は稲田朋美が嫌いな人達が作ったグループらしいし、そんなもんだろう。

何がしたいのか

そもそも、日本を侮辱する目的で国旗を損壊する行為を罰して、何がしたいのだろうか。

おそらく、これすらも布石だろうと思う。

自民党の保守団結の会は天皇崇拝者である。

そこで、最終的には不敬罪の創設が目標であると私は考えている。

国旗損壊罪の創設によって、日本を侮辱する行為も処罰の対象とする。

そして、天皇は日本を象徴する存在である。

だから、天皇を侮辱する行為、不敬な行為は日本を侮辱する行為に含まれる。

国旗損壊は処罰されて、天皇侮辱行為が処罰されないのはおかしい。

だから、国旗損壊だけではなく、天皇への不敬な行為も処罰の対象とする。

ついては不敬罪を創設する。

不敬罪が創設された場合、「天皇の名で公布された法律に対する批判も、天皇批判、ひいては不敬にあたる」といえればしめたものである。

政権与党が成立されたわけのわからん法律でも批判ができなくなるからである。

ま、以上は妄想だが、本音を言えば、リベラル排除だろう。そのうち君が代不起立罪も制定するんじゃないの。しらんけど。

何が問題なのか

以下、何が問題なのかを論点ごとにのべる。

1 保護法益はなにか

まずは、ざっくりと保護法益について説明する。

刑罰を与えるには、与える必要性がなければならない。

刑罰法規によって守るべき利益がなければ、刑罰を与える必要性はない。

この法によって守るべき利益を保護法益という

保護法益がない刑罰法規はありえない

保守団結の会が主張しているのは、外国の国旗を破壊する行為が処罰されて、日本の国旗を破壊する行為が処罰されないのはおかしいという点だ。

「外国の名誉は守られて、日本の名誉は守られていないのはおかしい」ということだろう。

そうすると、国旗損壊罪の保護法益は「我が国の名誉」ということになりそうである。

「外国の名誉は保護法益なのに、我が国の名誉が保護法益でないのはおかしい。」

そう言っているのである。

ここに前提の誤りがある。

外国の国旗を破壊する行為が処罰されるのは、外国の名誉を害することによって、外交が悪化し、日本の国益が損なわれることを防ぐためである。

外国の名誉を守ることは保護法益ではない。

だから、現行刑法が日の丸の破壊について処罰しないのは当然である。日本の名誉を害したとしても、日本の国益が損なわれることはないからである。

2 仮に日本の名誉を守るとして

「いや。日本の名誉も今まで保護法益でなかったのがおかしいのだ。日本の名誉も保護法益にするべきだ。」当然そのような反論はありうるところである。

百歩譲って日本の名誉を保護法益にするとしても、それは国旗に象徴される日本の名誉とは何かであるかや、どの集団のどのような思想が日本の名誉を代表するのかが不明である以上、守ろうにも守れない。

また、不明であるというのはどうにでも説明できるということでもある。

例えば、政権批判を日本の名誉に対する侵害などと言われれば、政権批判を処罰することも可能となる。北朝鮮や中国のような話だ

憲法21条を引くまでもなく、日の丸を使って政権を批判するという表現の自由も保障の対象になるのが、自由で民主的な日本のあるべき姿である。

3 国の名誉を刑罰で保護するということ

国の名誉を刑罰で保護するということは、刑罰で保護しなければ守れない程度の名誉であることを意味している。

先程あげた日弁連の会長声明、後半部分はとってつけたような第二次世界大戦の話になっていて個人的にはわかりにくくなっていると思うが、途中に良いことを書いている。

引用しよう

日本において国旗とされる日の丸は国民の間に広く定着しており、愛着を感じる人も少なくない。しかし、国家の威信や尊厳は本来国民の自由かつ自然な感情によって維持されるべきものであり、刑罰をもって国民に強制することは国家主義を助長しかねず、謙抑的であるべきである。(中略)

この点、米国では、連邦議会が制定した国旗保護法の適用に対し、連邦最高裁が「国旗冒とくを罰することは、この象徴的存在をかくも崇敬され、また尊敬に値するものとせしめている自由を弱体化させる」として、違憲とする判決を1990年に出している

「国家の威信や尊厳は本来国民の自由かつ自然な感情によって維持されるべき」というのは、「強制されて抱かされる愛情や尊敬に意味はない」と読み替えればわかりやすいだろう。

人間がある対象に敬意を表するといえるのは、その対象を尊敬することも、侮辱することもできるときに、それでもなお自分の意思で敬意を表したからなのである。

言い換えれば、侮辱する自由のないところに、本当の尊敬など存在しない。と私は思う。

したがって、国旗損壊罪などを創設することは、我が国が国民から真に尊敬される国家になる道を狭めることになるだろう。

本来は国会議員が率先して、愛することのできる国を築いていかなければならないというのに、実に嘆かわしい行為といえよう。

「俺のことを好きになれよぉぉおお」「なんで好きになってくれないんだよぉおおお」「大事にしろよぉおおお」と喚かれるモラハラ案件と何が違うのか。

4 諸外国の事例?

さて、詳細は知らないがフランスやドイツにも自国旗への侮辱や損壊は罪となるらしい。

色々な事情はあるのだろうが、ヨソハヨソウチハウチである。

私に言わせれば、我が国のほうがこの分野では進んでいるのである。

なお、自民党がそんなにドイツやフランスを参考にしたいのであれば、もっと参考にしてほしい箇所はたくさんある。

まとめ

国旗損壊罪は不要のみならず害悪である。

そして、保守団結の会に所属している議員は、まずは一生懸命このコロナ禍を乗り切るための知恵を出すように努めてほしい。


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