改製原戸籍の文字が読めない場合の対処法を教えていただいた話


弁護士の業務ではよく戸籍謄本を集める。

職務上請求

弁護士が自分で戸籍を収集する場合、職務上請求制度を利用する。

事務所によっては、職務上請求作業の大半を事務局に任せることが多いだろう。私も、必要な記入事項を事務員さんに記入してもらって、私が目を通して職印を押して、請求する。

改製原戸籍の文字が読めない問題

職務上請求の書式には本籍地や住所、筆頭者氏名を記載する必要がある。ここで問題になるのが、「改製原戸籍の文字読めない問題」である。

改製原戸籍は、コンピュータで戸籍が作成される以前の戸籍だ。公務員が手書きで作成していた。

戦前からありそうな戸籍だと筆で書かれていたり、旧字のこともある。

昔の人の悪口は言いたくないが、文字が汚い公務員もいる。

そのため、改製原戸籍に基づいて別の戸籍を取得する場合、改製原戸籍に何が書かれているかわからないので、請求ができない問題が生じる。

これは弁護士や法律事務所の事務員経験者がよく遭遇する事態である。

 

私の従前の対処法

私は3つの対処法を組み合わせながら解決していた。

(1)依頼者に聞く

どのあたりに住んでたかとか、聞いたことのある名前、何でも良いのでとっかかりを調べる。

年配の人は意外と自分の本籍を言えるものである。

(2)地図を調べる

地名の場合は、読める文字の範囲で例えば「大分市」と書いてあれば、当然ながら本籍地は大分市内のどこかに特定される。

その後、ざっくり大分市内の地名を見ながら当たりをつけていく。選択肢があると発見できる確率は格段に上がる。

(3)くずし字辞典を使う

原戸籍の文字が読めない理由は、大抵、文字が崩れているからである。だから、くずし字辞典を使って、だいたい文字に当たりをつけていく。ここまで来ると最後の手段の感がある。

疲弊する弁護士・事務員

上記の方法はそれ相応に手間がかかる。言ったこともないような県の地名などあたりさえつけられない。市町村が合併している影響で、昔の地図を引っ張り出す必要があるが、それも手間である。

なぜ昔の人は「くずし字使用戸籍作成罪」を設けなかったのだろうか。(ついでにいえば、なぜ「くずし時使用カルテ作成罪」も設けなかったのだろうか。)

相続問題だとこのような戸籍を十数通集める必要がある場合も少なくない。疲れる。面倒である。

原戸籍添付

そんな恨みつらみをTwitterにつぶやいたところ、とても有用な対処法を教えていただいた。

教えて下さったのは、ふたつのいす先生(@eruear946)。

教えて下さった方法は、読めない原戸籍のコピーを職務上請求と一緒に該当市町村に送付するという方法だ。

このとき職務上請求書には「判読不能」と記載し、添付する原戸籍のコピーには取りたい本籍地や筆頭者の箇所にマーキングをする。

 

この方法で確実にうまくいくというわけではないだろう。特に全ての市町村の戸籍担当職員が対応可能かは分からない。

ただ、確かに地元の人が多い地元の役場なら、地名や人名の当たりをつけやすいかもしれない。

(うまくいかない場合でも「ふたつのいす先生」の責任ではありえない。また、この記事の責任は全て私にあるのは言うまでもない。これは強調しておく。)

 

が、実は私はこの方法を聞いて1通だけ読めない原戸籍が出てきたので、教えていただいた方法を試してみた。

読めない戸籍が出てくるのがこんなに嬉しいことはなかった。(私は手元に銃があれば撃ってみたくなるタイプだと思う。)

そしてもっと嬉しかったのは、確かにこの方法で取れたことである。

ふたつのいす先生、ありがとうございました。

 

また、Twitter上ではその他のアカウントの方からも、太鼓判を押していただいた。ありがとうございました。

おわりに

いよいよになれば最終手段があると思えば気は少し楽になる。

ただ、ふたつのいす先生からもご指摘があったが、「頑張って読む」という作業はおそろかにしてはならない

ご指摘ごもっともである。

役場の人も暇なわけではないのだから、安易な利用ではなく、マナーを守った利用を心がけるべきだろう。


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