天皇・皇族が裁判を起こせるか? 天皇・皇族に裁判を起こせるか?


秋篠宮家の長女眞子内親王殿下の結婚に関して、ネットがやかましい。

概ね結婚に反対する持論を述べているのは、おそらくリアルでも他人の人生に余計な介入をしまくって居場所がなくなりつつあるオッサン・オバサンが多いのではとの妄想をしている。

 

中には誹謗中傷に該当するようなコメント・書き込みも多く、被害者である当事者は法的措置を検討したっていい。

ただ、検討するかどうかは当然個人の自由なので、好きにしたら良い。結婚も裁判も、普通は、やれといわれてやるものでもなければ、やるなといわれてやれなくなるものでもない。

 

それはさておき、皇室の一員が裁判を起こす、あるいは起こされるとなるとことはそう簡単ではないようにも見える。そもそも法的にこのようなことが起きうるのだろうか?

 

1 天皇は皇族ではない

「天皇は皇族か?」というマルバツ問題があるとして、法的な答えはバツである。

皇室典範5条に皇族が定義されている。

第五条 皇后、太皇太后、皇太后、親王、親王妃、内親王、王、王妃及び女王を皇族とする。

皇族の中に天皇は入っていない。つまり、天皇は皇族ではないのである。自分が自分自身の親族ではないように、天皇も天皇の皇族ではない。

天皇というのは憲法に規定された特殊な役職で、皇族はその一族であるから、分けて検討したほうが分かりやすい。

 

なお、上皇は天皇の退位等に関する皇室典範特例法3条4項により、原則「皇族」として扱われる。例外的に「天皇」と同じように遇されることもあるが、陛下という敬称やお墓を「陵」と呼ぶという話なので、実質的には皇族である。

 

2 天皇と民事裁判

例えば天皇が交通事故にあった場合に、事故の相手方に損害賠償請求するために裁判所へ訴え出ることができるか?

あるいはその交通事故の加害者が、天皇に対して「いや、陛下が悪いでしょ!」と逆に訴訟を提起できるだろうか?

 

これが民事訴訟の当事者能力の話である。民事訴訟を訴え出る原告になったり、訴えの相手方である被告にしたりする資格を当事者能力と呼んでいる。

 

結論は天皇に当事者能力はないと考えられている。

つまり、天皇が民事訴訟を起こしたり、起こされたりすることはできない。

記帳所事件[1]https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52451 令和3年10月4日閲覧。という天皇を被告に訴訟が提起された事件では、最高裁判所が「天皇には民事裁判権が及ばない」と判断している。[2]正確には「当事者能力がない」ではなく、「民事裁判権が及ばない」なので、注意すべきなのだが、この記事では詳論しない。

 

理由は「天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴である」からということになっている。

 

被告になれない以上、原告にもなれない。

学者の中には批判も強い。というのも、天皇の行為も民法等の法律が適用されるはずなのに、その法律の適用に関して紛争が生じても解決できないというのはおかしいという考えからだ。

 

当事者能力がない代表例として死者、お腹の中の赤ちゃん(胎児)、架空の人物、アマミノクロウサギ等の動物がいる。天皇という生身の日本人にないというのは不思議なことだ。

 

3 天皇と刑事裁判

では天皇を刑事裁判の被告人にできるか

例えば、天皇が車で事故を起こし、誰かに怪我をさせた場合に、自動車運転過失致傷罪で罰金刑を科すべく起訴できるだろうか。

 

結論はできないものと考えられている。

皇室典範21条の規定を見てみよう。

第二十一条 摂政は、その在任中、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。

摂政というのは天皇が未成年だったり、病気で天皇としての業務(国事行為等)が行えない場合に置かれる役職だ。

認知症が進んだ方につける成年後見人のような制度である。

訴追というのは、刑事裁判で起訴されることをいう。

つまり、摂政は刑事裁判にかけられない

 

天皇の代わりを務める摂政ですら刑事裁判にかけられないのに、天皇を刑事裁判にかけられるわけがないと理解されている。

結局、天皇は刑事裁判にかけられないのだ。

 

4 皇族について

皇族には前記のような判例も、法律もない。

解釈によっても、皇族は日本国の象徴ではないので、およそ民事裁判も刑事裁判も当事者(原告・被告・被告人)になれるということでいいだろう。

 

まして、女性皇族の場合は、結婚等により自動的に皇族ではなくなる。

第十二条 皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる。

(男性皇族の場合には、皇室会議の議を経なければならず、事実上皇籍離脱は阻止できる。)

 

皇族ですら裁判の当事者になれるのだから、まして元皇族なら当然当事者になれる。

当然、元皇族の夫ももちろん。

 

5 所感

眞子内親王殿下やその夫になる予定の小室圭氏について、マスコミもインターネットも非常に問題のある言動で溢れているように思う。

そう、それこそ1億、2億の持参金なんてはした金になるほどの損害賠償請求ができるのではなかろうか。

 

「そんなことしないでしょ。流石に。だって元皇族だよ?」と思うだろう。

しかし、このことから、「やり返されないからやっても良い」というのは最も卑怯な考え方だ。

それをおいても皇族という生まれながらの身分を理由に、税金を勝手に与えて自由を奪い続けてきたという異常性を棚に上げて、「誹謗中傷してきた国民を訴えるなんて異常だ。大人げない。」などとどの口が言えるのだろう。

 

訴えられなかったとすれば、それは国を捨て去る覚悟であろう彼らが、愚かな日本人達にかけた最後の冷たい温情だと受け止めるべきだ。

我々日本人は大いに反省し、憲法を改正して天皇制という最も光栄ある奴隷制度を廃止するか、せめて各種の立法的措置で自由の範囲を拡大させるべきだと思う。

 

6 補足

天皇を当事者にする裁判ができないからといって、天皇に法律が適用されないわけではない。

だから、上の例で天皇が交通事故にあった場合などは、天皇名義で請求したりされたりすることはできる。

内容証明郵便の送り先は宮内庁になるのかな?

送りたくはないが……。


References

References
1 https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52451 令和3年10月4日閲覧。
2 正確には「当事者能力がない」ではなく、「民事裁判権が及ばない」なので、注意すべきなのだが、この記事では詳論しない。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です