差押禁止動産や執行逃れ 権利の実現の困難さ 


お金を貸している人が、期限になってもお金が返ってこないからといって、借りている人の家に乗り込んでいって、貯金箱を開けたり、財布から金を抜き取ったりすると、それは窃盗罪になる。おそらく住居侵入罪もつくだろう。嫌がる借主から暴力で無理矢理取り立てたりしたら、強盗罪にもなりうる。

自力救済の禁止

つまり、日本では自分の力で強制的に権利を実現することを許していない。これを自力救済(じりききゅうさい)の禁止という。

権利の実現は原則として国が行う

では、どうやって権利を実現すればよいのだろう?

まず請求して、借主自身の意思で返済させるということがオーソドックスである。これは自分の力で返済させているわけではなく、あの手この手を使うけれども、借主の力で返済されているだけだから、自力救済にはあたらない。

しかし、世の中には人から借りたものでも、いっこうに返さない人がいる。

そこで、強制的にお金を返させる仕組みがなければ、貸した人は報われない。そんな世の中では誰もお金を貸したりしなくなる。そうすると、本当に借りたい人が借りられなくなってしまう。これはこれで世の中が困る。ローンで家を建てたり、ローンで車を買ったり、奨学金で学費を借りたり、病院代が急に必要で借金したり、ということができなくなるからだ。

借金とは別に悪い行為ではない。金を返さないことが悪いことなのだ。[1]当然、返せないのに、借金をすることは悪いことだ。刑法もこれを詐欺罪とすることがある。

かといって、じゃあ取り立てのために何でもして良いですよ、ということになっても困る。みんなが自力救済しはじめれば、世の中は暴力に満ちあふれてしまう。そんな社会に誰が住みたいと思うのか?

だから、強制的に取り立てることは国家にだけ認められている。国が貸主に代わって借主から取り立ててくれるのだ。この場合、別に殴ったり蹴ったりはしない。たんたんと借主の家に行って、泣こうがわめこうが、たんたんと取り立てていく。そこに暴力はない。

たんたんとした取り立てのことを、民事執行という。借主の物を取り上げて、売り払ってお金に換えてしまったりできることもある。この民事執行の方法を差押え(さしおさえ)と言う。

差し押さえられない物

しかし、何でも取り上げられるわけではない。差押禁止動産といって、差し押さえが禁止される物がある。

例えば仕事でどうしても必要な物は、借主から取り上げてしまうと、借主は生活できなくなる。それはまずいということで、差し押さえられない。

また、学校の教科書なども、取り上げてしまうと、生きていくのに重要な勉強ができなくなるので、まずい。そこで差し押さえられない物になる。

消火器や避難ばしごなどを取り上げれば、火事になったときに死んでしまうかもしれない。これは単純に暴力を振るうより悪いかもしれない。だから、差し押さえられない物になる。

理解できないのは、66万円までなら現金があっても差し押さえられないのだ。なぜ66万円なのかは調べたがわからなかった。しかし高すぎるように思われる。

執行逃れ

そして、差押えは法律に基づく厳格な手続で、特に厳格なのは借主の物しか差し押さえられないということだ。だから、借主に子どもがいても、子どもの物は差し押さえられない。

貸主に知られていない銀行口座に隠してしまえば差し押さえられない。借主がグルになった仲間の家にお金や物を隠してしまえば差し押さえられない。これを無理矢理口を割らせることも現実的にはできない。

こういった行為は、執行逃れ(しっこうのがれ)といって、場合によっては犯罪になり得る。しかし、日本の警察ははっきり言って「わかりやすい犯罪」しか扱わないから、こういった犯罪をきっちりと捜査することはほとんどしない。むしろこういった民事に首を突っ込むことは嫌がる。これを民事不介入(みんじふかいにゅう)という。[2] … Continue reading

なので、このような犯罪的行為はまかり通っている。そして、信頼してお金を貸した人は泣き寝入りせざるをえなくなる。これは不正義だと思う。

なかには「強制執行なんか恐くない!」「たとえ現金を所持していても、差押えの危険性があるなら、信用の出来る親族に預けてしまえば差押えは出来ません。」などと言うNPOもいる[3]https://www.syouhisya.org/kyousei-shikkou/seizure_of_cash.html 2018/11/30閲覧。サラ金やヤミ金といった悪徳業者から身を守るための目的は理解できなくもないが、私は言い過ぎで不正義だと思う。この記載を信じて実行したら刑罰を科されるおそれもあることをNPOは理解しているのだろうか?

結局のところ

権利を実現するのはとても難しい。

「人に金を貸すときは、やるつもりで貸せ」とはよく言ったもので、個人での貸し借りについては真理だと思う。


References

1 当然、返せないのに、借金をすることは悪いことだ。刑法もこれを詐欺罪とすることがある。
2 この言葉を使う警察官の半分は権力を行使する者としての責任をしっかりと理解している良い警察官で、もう半分は仕事をしたくない怠惰な悪い警察官だと私は思っている。正確な割合があるわけではないが。
3 https://www.syouhisya.org/kyousei-shikkou/seizure_of_cash.html 2018/11/30閲覧

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