令和5年12月5日、東京都の路上で、タクシー運転手がタクシーを運転中、ハトをひき殺した容疑(鳥獣保護法違反)で逮捕された。
「この程度で逮捕するなよ。」という感想は、悲しいことに多くの刑事事件で生じる感想だが、本件ではさらに唖然とするような事実が報道された。
警視庁は、目撃者の証言やドライブレコーダーの記録などからタクシーが急加速していることを確認し、〇〇容疑者が故意にひいたと判断、プロドライバーとして悪質性が高いとして逮捕したということです。(引用者注:被疑者名は伏せ字にした。)
(引用元:ヤフーニュース 動画では1分6秒くらいから 令和5年12月6日閲覧)
いやいやいやいやいやいや。ご冗談を。
刑事訴訟法上、通常逮捕は、逮捕の必要性がなければ違法である。
逮捕の必要性とは、逃亡のおそれ、又は、罪証隠滅のおそれである。
普通に考えて、鳥獣保護法違反程度の罪を免れるために逃走するような奴はいない。警視庁から呼出状一本出せば、大抵の人は文句を言いながらも出頭するだろう。道路交通法違反でも普通にやっている手続を省略して、「どうして逃走のおそれがある」と判断できるだろう?(いや、できない。)
報道によると、ひき逃げを目撃した通行人が、一度、「ハトひきましたよね?」と被疑者に注意したそうだが、被疑者は無視して走り去ったそうだ。ただ、このことをもって、被疑者が逃走する人間だと判断できない。そこらへんの通行人が注意したのを無視した程度で、捜査機関の呼出状を無視すると判断するのには、大きな飛躍がある。
したがって、逃亡のおそれはない。
罪証隠滅にいたっては意味不明である。死んだハトはご丁寧に獣医が解剖して死因を特定したそうだ。また、どうもドラレコの記録があり、故意にひき殺したことを認定できるようだ。そうするともう証拠としては十分で、一体このうえ何を隠滅するのだろう?
罪証隠滅のおそれもない。
つまり、この事件は、逃亡のおそれもない、罪証隠滅のおそれもない被疑者を逮捕したことになる。たまたまタクシードライバーであって高い職業倫理が求められる人物だったことを理由に、「ハトを轢き殺すなんて悪質だ。」という評価で、逮捕したことになる。そんなことは許されない!
確かに、事案の悪質さも、逮捕の必要性の判断に影響を与えないわけではない。例えば、悪質すぎて死刑が予想されるような事件であれば、誰でも逃げたくなるだろうから、逃走のおそれありといって良いだろう。ただ、今回の事件は鳥獣保護法違反だが、どんなに悪質でも1年以下の懲役らしい(何条に該当するのかは私はわからないので、もっと軽いかも知れない。)。悪質いうても、犯罪全体の中では極めて軽微な犯罪なのである。
悪質さでいえば、刑事訴訟法の趣旨に反して、人一人を拘束し、実名を出して晒し上げた警視庁のほうがよっぽど悪質である。この被疑者が職を失い、人生が狂ってしまうほどの悪いことをしたのだろうか? 逮捕&公表は完全な晒し上げ。逮捕という捜査上の手続を、実質的に処罰のために用いたに等しい蛮行。中世ジャップランドの権力の犬。お前たちがひき殺されても鳥獣保護法を適用されるべきである。
それを無批判に垂れ流したマスコミも紛うことなくマスゴミである。ニュースバリューなんぞ物珍しさ程度しかないこの事件で、実名報道する理由がどこにあったのか? そもそも逮捕の必要性がある事案なのかと警視庁を批判的に追及するべきが公器たるお前たちの仕事である。愚か者が。犬の糞を包む新聞紙がお前達だ。
だが最も腐っているのは、この事件で逮捕状を発付したお前だよ。裁判官! お前、何をみて逮捕の必要性があると判断したんだ?? お前たちが自動販売機程度の気軽さでポンポン無意味な令状を出しまくるから、こういう調子に乗った事態が生じるのだ。
当番弁護人がつけば、ぜひともこの事件、勾留阻止のために動いて欲しい。(そもそも検察官は勾留請求するべきではない。)
最後に、今回犠牲になられたカワラバトに対し衷心より哀悼の意を表するものであります。本件の被疑者があの世で正しく裁かれることを祈念するものです。