平成30年11月1日に、経済産業省が、飲食店を予約しておきながら無断でキャンセルする消費者に関する対策をレポートした。
No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポートが発表!
http://www.meti.go.jp/press/2018/11/20181101002/20181101002.html
指針の意義
確かに、キャンセル料を請求できる根拠や、請求できる金額に関する検討をまとめたレポートには大変価値があると思う。
飲食店事業者は、法律的に、請求がそもそもできるか、いくら請求できるのかは理解していなかっただろうから。
だから、いざ請求するとなったときに、もっと請求できるはずなのに、請求しなかったり、その反対に、請求できない金額も請求したりといった無駄手間が発生してしまう。あるいは、そもそもいくら請求できるかわからないから、いっそ請求しないというもったいないケースもあっただろう。
レポートを読めば、無断キャンセルした消費者に自信を持って効率的に請求することができるだろう。
請求の手間・負担の問題
他方で、この指針では、請求の手間の問題には触れられていない。
結局、20万円、30万円の損失が出たとしても、これを消費者に請求する手間がかかる。
飲食店事業者が自ら請求するなら電話することになるだろうし、住所や勤務先が分かれば請求書を送ることになる。これが第一の手間だ。
なんて言って電話すれば良いのか? なんと請求書に書けば良いのか? ここで諦める飲食店も少なくなかろう。
また、自らではなく、弁護士に依頼して請求されるにしても、いわゆる費用倒れ案件になる。弁護士への相談料、着手金、成功報酬で20万円ぐらい簡単に消えてしまうからだ。20万円請求するのに、20万円かけていては世話はない。
そうすると組合などの事業者団体を1つ作っておいて、顧問弁護士を入れて、大量請求・大量処理で1件あたりのコストを下げるなどの対策は考えられるが、それを飲食店事業者がどこまでできるだろうか?
それに、法的請求には証拠が必要だ。名前が偽名だったら? 電話番号から個人を特定するには費用がかかるが、それは許容できるか? 証拠を何とか集めて裁判を起こしても、相手から金銭を得るには執行が必要だが、執行の手続きはできるか? 執行のために弁護士に費用が出せるか?
絵に描いた餅
結局、色々と考えていくと難しいことだらけなのだ。権利を実現するのに困難がつきまとう。これは業界の問題でも、消費者の意識の問題でも無く、司法の問題だし、弁護士業界が経済的に洗練されていないことの表れではないだろうか?