内乱罪の適用が不安な方
(相談したい場合でも、当事務所以外に)
ご相談ください!!
● 自分の行為が内乱にならないか?
● 逮捕されたらどうなる?
● 処罰されないためにはどうしたら?
政府を転覆したい、理想の日本を取り戻したい。そんなとき武力に訴えてでもと思う方は多いでしょう。
しかし、常識的に考えれば、そんなことは犯罪です。何が犯罪かどうかは打倒されるべき政府・国家が定めているのですから当然に予想できることです。
そこで、今回は、そんな犯罪の中でも内乱について、内容や対処法をわかりやすくご説明します。
注:内乱はいかなる立派な動機に基づくものであろうと犯罪です。体制変更は平和裏に行いましょう。
注:本サイトは内乱罪の解説を行うことを目的としています。内乱を起こしてほしいとはこれっぽっちも思っていません。
注:本気で内乱罪について弁護士に相談したい場合には、まず内乱罪に関する相談を受けているのかどうか相談したい弁護士事務所に問い合わせてから相談しましょう。なお普通は受け付けていないと思います。
1 何をしたら内乱になる?
刑法の条文を見てみましょう。
(内乱)
第七十七条 国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をした者は、内乱の罪とし、次の区別に従って処断する。
一 首謀者は、死刑又は無期禁錮に処する。
二 謀議に参与し、又は群衆を指揮した者は無期又は三年以上の禁錮に処し、その他諸般の職務に従事した者は一年以上十年以下の禁錮に処する。
三 付和随行し、その他単に暴動に参加した者は、三年以下の禁錮に処する。
2 前項の罪の未遂は、罰する。ただし、同項第三号に規定する者については、この限りでない。
腐敗しきった現行の公権力が、あなたを内乱罪で処罰するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
(1)暴動
まず、あなたが暴動を起こしている必要があります。
暴動は少なくとも一地方の平穏を害する程度のものであることを意味します。一地方について明確な定義はありません。でも、例えば東京であれば23区内で多くの人を殺してまわったり、脅しまくれば一地方の平穏を害することになるでしょう。大分市だったら東西を祓川と大野川、南北を海と高速道路で囲んだ範囲であれば、一地方といって差し支えないように思います。
近年で一番この暴動に近い事態になったのはオウム真理教による地下鉄サリン事件だと思います。もっとも、サリンをまいた後の破壊活動がなかったので、暴動とは言いにくい側面があります。
暴動は殺人、傷害、暴行、放火、建造物損壊、器物損壊等の手段を選びませんが、全体として一地方の平穏を害するものであればよいです。逆に言えば1つ1つの行為がそれほどでもない暴行等でも、内乱罪にいう暴動の一要素とみられる可能性はあります。脅迫についても同様です。
(2)目的
あなたが加わる暴動がある目的をもっていなければ、内乱とはいえません。
それは「憲法の定める統治の基本秩序を壊乱すること」です。国家体制の変更を目論んで起こした暴動であれば十分です。国の統治機構を破壊することや、領土内において国権を排除して権力を行使することが、この目的の例として条文に記載されています。
かつてはこの目的のことを朝憲紊乱(ちょうけんびんらん)と呼んでいました。法学の中で一番かっこいい四字熟語だと思っていますが、刑法は口語化されたので、今はあまり知られておらず残念です。
例えば共産主義革命で現在の国会・内閣を解散消滅させて、ソヴィエト(≒会議体)や国家改造内閣が独裁する国家を作るということを目的としていれば、十分国家体制の変更を目論んでいます。
また、一地方の独立を目論むことも、この目的に該当するでしょう。例えば大分温泉共和国みたいなのを建国しようとして、日本からの独立を目論むことは、大分地方から日本の公権力を排除する目的といえるので、朝憲紊乱といってよいと思います。
他方、自民党の国会議員を何人暗殺しようと、それが「自民党をぶっ潰す」という純粋な目的で行われたものであれば、内乱にはあたりません。自民党は憲法の定める統治の基本秩序とはいえません。自民党がなくなっても、日本の国会制度は機能するからです。(もちろん少なくとも殺人罪が適用されますし、何人も暗殺したら普通は死刑です。)
(3)組織
朝憲を紊乱する目的で大規模かつ広範囲なテロを起こしたとしても、それがたった1人で引き起こされたものであれば、内乱にはなりません。そもそもそんなことは不可能でしょう。また、新しい統治機構を作ることが目的である以上、1人で行うことはやはりできないと言ってよいと思います。内乱罪は集団で行っている必要があります。
内乱罪はこの組織の構成要素を規定しています。首謀者(1号)、謀議参与者(2号前半)、群衆指揮者(2号前半)、職務従事者(後半)、付和随行者(3号)です。
首謀者というのは、内乱全体の計画立案、実行中の方針決定し、全体の行動を指示したりするリーダー、中心人物です。反乱軍の司令官、革命政党の代表者が該当します。ちなみに1人であるとは限りません。組織の最終決定が合議制を取っているような場合には、首謀者が何人かいると評価されることもありえるでしょう。
謀議参与者は、内乱の計画立案に関わるような人です。もっとも、決定権があると首謀者と評価されるでしょうから、あくまでもアドバイザーであることが典型的ではないでしょうか。首謀者の参謀役のような人です。
群衆指揮者は、暴動を担っている群衆(武装集団の構成員のように組織化されている場合もあれば、後述する付和雷同者の場合もあります。)に対して「あっちを攻撃しろ」「あいつを殺せ」「撤退だ」などと具体的な指揮を行う人のことです。もちろん、群衆指揮者が、内乱全体の計画立案に関わっていたり、陰謀に加わっているようなケースでは、首謀者や謀議参与者と評価されることになるでしょう。
職務従事者は、内乱を成功させるための役割を割り振られて、それを担う人のことです。反乱軍で実際に武器を使う兵士であれば職務従事者といえるでしょうし、例えば革命の宣伝工作を担当する人や、武器食糧の調達に従事する人も職務従事者と言えるでしょう。なお、特別規定である破壊活動防止法の定めも確認してください。
付和雷同者とは、別に任務を与えられてもいないのに、勝手に暴動に参加した人のことです。その意味で職務従事者とは区別されます。
内乱罪が成立するためには、少なくとも首謀者1名とそれなりの数の職務従事者が必要です。
(4)他の犯罪との関係
暴動中に行われた個々の殺人、放火等については、朝憲紊乱目的で行われた場合には、内乱罪で一括して処罰されます。反対に、朝憲紊乱目的とは関係のない行為、たとえば暴動中に、私利私欲で略奪に及んだり、むかつく上司をついでに殺したりすると、それは内乱罪とは別の犯罪、例えば窃盗罪(235条)、殺人罪(199条)が成立します。
内乱罪で処罰される人たちには、首謀者から付和雷同者までみんな朝憲紊乱目的を持っていなければだめです。なんだかよく分からないけど、とにかく大人数で暴れたというレベルの認識の人は、騒乱罪(106条)、その他の個別の刑法犯が成立する程度で処罰されることになるでしょう。
内乱を扇動したような場合や宣伝工作活動に従事したような場合には破壊活動防止法38条違反に該当することがあります。これは組織に組み込まれていない非構成員でも該当しえますので注意しましょう。
また、内乱罪に関係する罪として、内乱を物理的あるいは人的に具体的に準備した場合には内乱予備罪、内乱を計画した場合には内乱陰謀罪が成立します。
2 内乱罪で逮捕起訴されたらどうなる?
(1)内乱失敗後
内乱に失敗すると当然逮捕されます。いや、もちろん手錠をかけられる前に、銃弾が浴びせかけられる可能性も十分あるのですが、死ねば英雄になっているか、被疑者死亡のまま不起訴になるので、法手続は気にしなくて結構です。
逮捕された場合、ほぼ間違いなく勾留されて取調べを受けることになります。
司法警察職員が逮捕した後は48時間以内に検察庁に送られ、そこから24時間以内に勾留請求されます。
勾留は10日間が原則ですが、捜査上の必要性があり、身柄を拘束しなければ逃亡や罪証隠滅のおそれがある場合には、最長10日間、例外的に延長することができます。内乱罪はほぼ間違いなく延長されるでしょう。
そして、内乱罪には特例があり、他の犯罪とは異なって、さらに最長5日間延長することができます。つまり普通は最長20日間の勾留が、内乱罪の場合は25日間になっています。ちなみに私戦予備罪や騒乱罪等の罪も同様です。
この間、接見禁止命令がつくことは間違いないので、弁護人以外に外部の人と会うことはできないと考えてください。
なお、弁護人が確実につくのは勾留以後ですが、逮捕されたらすぐに「当番弁護士を呼んでください。」と言いましょう。内乱罪の勉強も司法試験の範囲ですから、最寄りの弁護士会から弁護士が派遣されて、誰が来てもそれなりにアドバイスしてくれると思います。あるいは内乱を計画するときに、捕まった場合の弁護士も事前に考えておきましょう。ただし、まかり間違ってもその弁護士を仲間にしておこうとは思わないでください。内乱が失敗したということは、その仲間の弁護士も捕まる可能性が十分ありますので、いざというときに呼べずに困ります。(それよりなにより内乱で弁護士会を破壊してしまっていたら機能しなくなっている可能性があるので、壊す場所は注意しましょう。)
取調べの対応ですが、基本的には黙秘してください。捜査機関の連中にあなたの政治的主張を聞かせてもしょうがありません。そして25日くらい黙秘する精神力がない人間は内乱に加わるべきではありません。
(2)起訴後
起訴された場合に、首謀者、謀議参与者、群衆指揮者は、無期禁錮以上の実刑がありえるので、裁判員裁判の対象事件になると思う方もいるかと思います。
しかし、内乱罪は第1審が地方裁判所ではなく高等裁判所の管轄になりますので(裁判所法16条4号)、地方裁判所でしか行わない裁判員裁判の対象にはなりません(裁判員法)。
起訴状も高等裁判所に提出しますので、大分で内乱を起こした場合には、福岡高等裁判所に起訴されることになるでしょう。もっとも、被害者が首都東京に集中すれば、東京高等裁判所になることもあるでしょう。
この場合、弁護人が高等裁判所のない府県の弁護士会の所属だと接見等がままなりませんので、私選弁護人を考えている場合には注意しましょう。
審理には相当の時間を要すると思います。なお、保釈はあきらめてください。通りません。
(4)有罪判決の場合
首謀者は死刑又は無期禁錮、謀議参与者と群衆指揮者は無期または3年以上の禁錮、職務従事者は1年~10年の禁錮、付和随行者は3年以下の禁錮です。
禁錮刑は懲役刑と同じく刑事施設に収容される刑罰ですが、懲役刑と異なり刑務作業を義務付けられません。これは内乱罪が政治犯としての名誉に配慮するべき犯罪という古い考え方に依拠しています。ただし、懲役刑と禁錮刑の区別が2025年6月から無くなって、拘禁刑に一本化される予定ですので、違いは無くなります。
死刑の場合には絞首刑になります。
3 法廷闘争の方針
(1)黙秘
黙秘が一番大事です。
(2)死刑回避
できれば死刑回避したいですよね。首謀者とされなければ内乱罪で死刑になることはありません。オウム真理教の事件でも、「被告人には内乱罪が適用されるはずで、被告人は首謀者ではないから、死刑にならない」という主張が一部の被告人で行われました。オウム真理教には内乱罪が適用されなかったので、この主張は通りませんでしたが、正真正銘の内乱罪なら十分ありえる主張でしょう。
繰り返しになりますが、首謀者にならなくても、内乱罪とは別に殺人罪等が適用されて死刑になることはありえます。
4 処罰されないために
(1)何としても成功させる
処罰されないためのもう一つの方法は、内乱を何としても成功させることです。内乱の成功は、すなわち日本の公権力を大なり小なり永続的に破壊できたということですから、誰も貴方を処罰することはできないでしょう。もっとも、完全に日本の公権力を破壊してしまうまでは、延々と「独立戦争」「永続革命」が継続することになりますので、あなたが枕を高くして眠ることはできません。(革命が成功しても枕を高くして眠れるとは限りません。剣による者は剣によって滅ぶでしょう。)
(2)実行前に自首する
内乱罪は予備陰謀の段階で自首すれば、必ず刑の適用を免除されます。弁護士としては今まさに予備陰謀を行っているあなたには自首を勧めるしかありません。
ちなみに自首については本サイトの別の記事も参照してください。
5 内乱罪の事例
刑法の内乱罪が適用されて処罰を受けた事例はありません。
5.15事件、2.26事件では日本軍の軍人たちに内乱罪の特別規定である叛乱罪(反乱罪)が適用された事例はあります。2.26事件では非軍人であった北一輝に叛乱罪が適用されています。
(5.15事件を報じる朝日新聞)
(2.26事件の反乱軍の様子)
6 まとめ
いかがでしたでしょうか? 内乱罪は重大な犯罪です。自分の言動が内乱罪や予備陰謀に該当するのではないかとご心配な方は図書館に行って刑法の教科書を読みましょう。そのくらいの調査も勉強もできない人が内乱などという大それたことを考えること自体間違いです。平穏無事にお過ごしください。
どこに使うのかわからなさすぎて好き
朝憲紊乱流行らせよう
(付和雷同者?付和随伴者?)
自民党は安倍が暗殺されたり岸田が暗殺されかけたとき「民主主義への挑戦だ!」と俺達自民党こそが法の中心であるかのようなことをボヤいてたけど主権者である国民の血税を主権者に同意を得ず私利私欲の為に使い込み、不要な重税を課し主権者を虐待している自民党自身が民主主義への挑戦をしているというね・・・国民は舐められすぎだよ。
しかし日本国民ができる唯一の反抗は選挙で自民党以外の政党に投票するか自分で政党を作って国政政党になるしかないのだ。
将来、自民党には下野したときに是非「民主主義への挑戦だ!」と憤慨していただきたいものだ。
ネタ記事でガチな政治思想をカミングアウトするとか黒歴史確定だぞ
と言いたいが記事を読み直したらガチな事件も話題に挙げているので、案外そうでもないのか?
いやそれでも頭がぶっ飛んだコメントだな…
卒爾ながら、大変勉強になりました。将来お世話になるかもしれません。
時勢に敏感で、将来ニーズを先取りするようなセルフプロモーションができる、凄腕弁護士とお見受けいたします。
通りすがりでお見かけし拝読しました。たいへん勉強になる内容でした。
私は先生が仰るところの「現行の公権力」に雇用されております。
実際に内乱が起きた際には(東京であればKC庁が対応しきれない等の)場合によっては「金属製の長い中空の筒」や「花火的な物が詰まった短い筒」等を使用して朝憲紊乱された方々を「めっ!」する仕事に就いていながら、自分自身が直接的に法的対処をする訳ではないとはいえ、昨今の不安定な国際情勢から蓋然性が高いと思い込んでいた外患にばかり目を向けていました。
これまで内憂を意識することがなく己の無知を恥じ入るばかりです。
是非ともこの知識を使うことなく、自分たちが一部の口さがない方々の言う「税金泥棒」「無駄飯食らい」であるような、平和な時代が続いてほしいものです。