令和元年4月19日におきた池袋の自動車事故から半年以上が経過した。飯塚幸三は書類送検された。
「なぜ逮捕されないのか」については以前書いた。
今回は書類送検の持つ意義に絞って書く。
書類送検の意味
送検の意味
送検とは警察官等が検察官に事件の処理を求めることをいう。事件の処理を求める時には、被疑者や事件の書類を警察署から検察庁に送る。送ることを送致という。そこで、検察官の「検」と送致の「送」をとって、「送検」と略される。
犯人を逮捕したケース
警察官が犯人を逮捕した事件で、そのまま身体拘束を続けたい場合には、逮捕した犯人を48時間以内に送検しなければならない。
刑事訴訟法 203条1項 司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。
ちなみに犯人の身柄を受け取った検察官は24時間以内に勾留するかどうかを決めなければならない(同法205条)。逮捕の時から72時間を超えてはならない(同)。
犯人を逮捕していないケース
警察官が犯人を逮捕していないケースでも送検をしなければならない。
刑事訴訟法 246条1 司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。
この条文では「速やかに」とあるが、「警察官が一通りの捜査を終えた後すぐに」という意味で理解されている。逐一捜査報告していると警察官も検察官も煩わしくて事件処理の効率が著しく落ちるからだ。
一通りの捜査が終わったら、警察官は書類及び証拠物を検察官に送致する。逮捕したケースと違って基本的には犯人本人は検察庁に送られない。書類しか送検されないのである。これを略して書類送検という。
だから、書類送検という言葉をニュースで聞いたら、「犯人の目星は付いているけど、逮捕はされていない事件なんだなぁ」と思っていい。
今後どうなるのか
書類送検された事件については検察官が処理の方針を決めることになる。
具体的には刑事裁判にかけるかかけないかを決める。かけることを起訴といい、かけないことを不起訴という。
起訴には大きく正式起訴と略式起訴がある。略式起訴というのは交通事故事件ではよく使われる簡単な刑事裁判だが、今回は事案が重大なので正式起訴すると思う。
正式起訴されたら刑事裁判が始まるが、最終的な結果は執行猶予付き懲役判決なのではないかと思う。
今回の送検された際の罪名が過失運転致死である。結果の重大性や社会的な処罰感情の大きさを考慮しても、他の事件を見ても、いきなり刑務所に入れるというケースではないからだ。
これを機に、また交通事故事件に対する罪が重くなるのではないかと予想される。