元検察官大坪弘道氏の弁護士登録を認めるべきではなかった


1 驚きのニュース

平成22年、日本の検察官の信用を失墜させた事件があった。大阪地検特捜部証拠改竄事件である。こともあろうに公益の代表者を自負する検察官が、障害者郵便制度悪用事件という事件の捜査の過程で、何の罪もない市民を罪に陥れるためにでっちあげの証拠を作り出したことが明らかになったという異常な事件だ。

元々の障害者郵便制度悪用事件という事件も、捜査手法にかなりの闇を抱えた事件であり、改竄事件は検察庁の腐敗の一端を示すものに過ぎないとされていた。改竄事件が表沙汰になったのは、不幸中の幸いとして、朝日新聞がスクープしてくれたおかげだ。

この改竄事件に関与していたことで執行猶予付きの有罪判決を下された元大阪地検特捜部長大坪弘道氏が、大阪弁護士会に弁護士登録するそうである。

極めて異常な事態と思われる。

2 登録を許すべきではない

第一条 弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。
2 弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。

弁護士法1条である。もはや陳腐にも聞こえるが、弁護士は基本的人権の擁護者であり、社会正義の実現を使命とする。

私は信じたい。どんなに陳腐に聞こえようと、すべての弁護士は、大なり小なり、僅かでもこの使命を胸に秘めていると。表立って言うことではないが、できることなら正義を実現したい、少なくとも自らが悪者になってはならない。そういう気概を持っていると。傍から見れば小うるさい悪しき隣人かもしれない。ときにはトンチンカンなことも言うだろう。世間の常識を知らずに、叩かれて、ムキになる弁護士もいるだろう。石頭の変人に見えるかもしれない。しかし、それでも正義の味方になりたい。それで笑うなら笑え。笑われても立っていられる存在でありたいのだと。

であればこそ、弁護士は相手が国であろうと何であろうと、狂犬の如く、野狐の如く、獅子の如くありうるのである。

言い換えれば、基本的人権を擁護せず、社会正義を実現しなかった者に、弁護士になる資格はない。と私は思う。

大坪氏が執行猶予中に、そして執行猶予明けに、どのような反省を示そうと、改心していようと、大坪氏は基本的人権を擁護せず、社会正義を実現しなかった事実は消えない。したがって、私は大坪氏が弁護士に登録するなどありえない結論だと考える。弁護士のみならず法曹にとって最もあってはならないと口を酸っぱくして言われるのが冤罪である。法学部でも、司法修習でも、法曹になってからも、冤罪を生み出すことこそ、基本的人権の最たる侵害であり、社会に対する著しい不正義だと教えられてきたはずであるし、教えてきたはずなのである。大坪氏はこの規範に背いた。それだけで法曹生命としては万死に値すると言わざるを得ない。

そして、弁護士は会をあげて、この大坪氏の登録を認めないためのあらゆる手立てを講じるべきだった。なぜなら、私は、大坪氏の法曹生命を絶つことこそ、基本的人権の擁護、社会正義の実現に沿うと信じるからである。

3 法の構造

では手立ては講じられたのか? 弁護士法によれば、登録及びその拒絶は次のような構造になっている。

  1. 弁護士になるには日本弁護士連合会(日弁連)の名簿に登録されなければならない(弁護士法8条)。
  2. 登録されるには、所属する弁護士会(単位会)を通じて、日弁連に登録を請求しなければならない(同法9条)。
  3. 単位会から日弁連に登録の請求を伝えることを進達という。
  4. 単位会は「弁護士会の秩序若しくは信用を害するおそれがある者」の請求については、進達を拒絶できる(同法12条1項柱書)。
  5. 進達を拒絶された場合(登録請求から3か月間進達されなかった場合を含む。)、請求者は日弁連に審査請求をすることができる(同法12条4項、12条の2第1項)。
  6. 審査請求に理由があれば、日弁連は進達するよう単位会に命令できる(同法12条の2第2項)。
  7. そして、進達を受けた上で、日弁連は登録することもできるし、登録を拒絶することもできる(同法15条1項)。
  8. 登録拒絶については、請求者は東京高等裁判所に取消訴訟を提起できる(同法16条1項)。

今回は単位会による進達の拒絶、審査請求の手続きを経ているのかどうかはわからないが、少なくとも、段階7において日弁連が登録を決定したようである。

4 日弁連は何を考えているのか?

登録に関する事項は日弁連の資格審査会で決められる(同法51条)。

資格審査会の委員には、裁判官、検察官、学識経験者が含まれるが(同法52条3項)、定数11名、内8人を弁護士が占めることになっている(日弁連会則66条)。

つまり、裁判官や検察官、学識経験者がなんと言おうと、弁護士だけの議決で資格審査会の意思決定は可能である。

逆に言えば、日弁連の資格審査会の弁護士委員の内、最低3名が大坪氏の登録に賛成しなければ、大坪氏が登録されることはありえないのである。

おそるべき堕落である。

執行猶予があけたから、反省しているからといって、許される問題ではない。いつ禊を済ませたのだ? 証拠を改竄して冤罪を作り出すような元検察官の弁護士がいるということ自体、弁護士会の信用を害することは明らかであるように思われる。そもそも、この事件、大坪氏には同情すべき要素が一片もない。

「日頃、被告人の更正を熱く語ってる癖に~」と言われるかもしれない。確かに私はそのように主張してきた。しかし、児童に手を出した教員を教職に復帰させようとは思わないし、顧客の預金を横領した銀行員を金融機関に復帰させることが正義だとも思わない。社会内でそれなりに暮らしていく分にはどうぞという話でしかないのである。弁護士登録をさせないことで、犯罪者扱いをしていると言われるかもしれない。犯罪者扱いといえばそうかもしれないが、より正確に私の感情を示すならば前科者扱いである。弁護士としての適正な活動ができる人物とは思えない。端的に言えばそういうことだ。

どうして日弁連は登録を認めたのだろうか? 反省を甘く見たのだろうか? それとも、取消訴訟の提起と敗北をおそれたのだろうか? いずれにせよ、怯懦の極みである。

5 恥を知るなら登録を取り消すべきである

大坪氏が恥を知るのであれば、登録していただいたところ悪いが、登録を取り消す請求をするべきだ。

この選択こそ、大坪氏にとって、基本的人権の尊重、社会正義の実現に適う唯一の道である。


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