本人訴訟について


裁判をするには金がかかる。

大きく

・裁判所に払う手続費用

・郵便代

・弁護士に払う費用

の3つに分けられる。

とりわけ高いのが弁護士費用だろう。

ところで、裁判は弁護士を入れなくてもできる。

弁護士に頼まない裁判のことを実務では本人訴訟と呼んでいる。

(私や私の周りの弁護士は調停でも本人訴訟という。)

 

本人訴訟のメリットは弁護士費用がかからないことだ。

デメリットは敗訴のリスクが高まることだ。

デメリットについて少し説明する。

 

弁護士の仕事は大工が家を作るのに似ている。

自分で家を建てることもできるだろう。

しかし、より良い家に住みたいなら、大工に建てさせるだろう。

人より家を建てることが上手いという点に、大工の仕事の価値がある。

弁護士の仕事も、人より裁判をするのが上手いという点に価値がある。

(それだけではないが。)

とりわけ裁判はほぼほぼ文書主義だ。

つまり文書を上手く書かないといけない。

大工が家を建てるように、法的な文書を書くのが人より得意でないと弁護士の仕事はつとまらない。

 

また、弁護士の仕事は外国語の通訳にも似ている。

日常的な言葉づかいを法的な言葉づかいになおす必要がある。

裁判は効率のために言葉づかいにお作法がある。

外国語のように自分で法律を学ぶこともできるだろう。

また、フィーリングでそれっぽい単語を並べることもできるだろう。

しかし、裁判官はいわば異邦人である。

分かりにくければ、わかりにくい主張として処理する。

伝わらない主張で「とりあえず勝たせとくか」となるほど、裁判は甘くない。

 

このように、本人訴訟は裁判自体に時間がかかるし敗訴の可能性も高まる。

しかも、本人訴訟は裁判手続に自分の日常生活を費やさなければならない。

仕事もあろう、趣味もあろう、家の事もあろう。

これらを犠牲にして本人訴訟をして幸福になれるだろうか。

 

そのため、弁護士は本人訴訟は勧めない。

(もちろんその上で依頼してくれればなお嬉しい。)

相手方が本人だと弁護士は概ねほくそ笑む。

書面には大体穴があるし、証拠も甘かったり、法的主張も適当だったり、あるいはこちらの弱点を的確につけていなかったりする。

裁判所も、本人だからといって必要以上に手を貸したりはしない。

裁判所は公平・公正を旨とするからだ。

 

弁護士の仕事はトラブルを解決する仕事でもある。

これは体のトラブルを治す医者のようなものだ。

自己流の医学で病気を治そうとすれば、より酷い結果になりがちだ。

 

本人訴訟は訴えられた側に多い印象がある。

訴えられた挙げ句に、自分の弁護士の費用を自分が払わなければならなくなる。

本人訴訟にしたくなる気分も分かる。

しかし、とにかく弁護士に相談した方が良い。

依頼をしたほうが良いのかどうかぐらいは確認した方がいい。

もちろん自分で訴えを起こす場合も同様である。

 

お金の面は弁護士と要相談だが、資力が基準以下なら、法テラスが使える弁護士もいる。


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