1 中曽根発言について
自民党参議院議員の中曽根弘文は、令和8年6月28日、「憲法改正と皇位継承について」との演題で講演した際、概ね以下の発言をした。
愛子さま素晴らしいし気持ちはよく分かるんですが、愛子さまっていうのはあり得ないんですよ。
それでもみんなが愛子さま愛子さまというのはマスコミの責任ありますけど。
まず法律がこうなっていることをしっかり国民に知っていただかないと、おかしな方向にずっと議論が行ってしまう。
いくら議論してもこれは本国会でも有識者会議の報告書をもとにまもなく法律が国会に提出されますから。
ということで愛子さまもお気の毒ですね。自分がなれないのにそんなことを言われて。
仮に愛子さまが天皇陛下になったらどうなるか。
愛子さま大変ですよ。まず結婚する人もいないですよ。皇后さまになる男性はいないと思いますよ。いるかもしれませんけど基本的には難しい。
そして愛子さまも男性のお子さんを産まなきゃならないというすごいプレッシャーもあるわけですね。
これだけマスコミが騒いだりみなさん愛子さまって気持ちは分かります。
世論調査で7割が愛子さまと言ってますけども、これはね人気投票ではないんですよ。
国家の天皇陛下を決める皇位継承をどうするかということなので、ここは冷静に法律とかそういうものにのっとってやらないと私は思います。
2 中曽根発言の問題点
(1)愛子様の皇位継承はありえないという点
日本国憲法は
天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。(1条)
と規定している。
女性天皇の即位については主要全国紙の世論調査でも6~7割の国民が賛成している。
天皇皇后両陛下の長子である愛子様が皇位を承継されることについて「ありえない」と断じれるような状況ではない。
中曽根は「法律上即位できないという点を述べた。」と弁明している。
確かにこの発言は正しい。
もっとも、中曽根の所属する自民党の主張を踏まえると、とたんに意味不明な弁明になる。
皇位継承に関する全体会議(正規名称「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議に基づく政府における検討結果の報告を受けた立法府の対応に関する全体会議」)において、自民党を中心にまとめられた「立法府の総意」は旧宮家から養子をとり、場合によっては養子又はその子孫に皇位を承継させるという内容を含んでいる。
現行法では養子縁組は法律上許されないのである。
皇室典範9条
天皇及び皇族は、養子をすることができない。
つまり、養子やその子孫も法律上即位できない。したがって「養子」の皇位継承は「愛子様」の皇位継承と同じくらい「ありえない」のである。
しかし、上記の全体会議では「ありえない」養子案を提案している。
その上、この全体会議になんと自民党を代表して中曽根弘文も参加しているのである。
仮に「改正すればありえる」という前提での発言だと善解するならば、女性天皇が即位可能なように改正すればよい点では同じである。
そうすると愛子様の皇位継承が「ありえない」とした発言はやはり意味不明になる。
二枚舌といわざるをえないであろう。
(2)愛子さまと結婚する人はいないとした点
結婚するしない、結婚できるできない、は極めてプライベートな事項であって、本来、外野が表立って発言するべきことではない。
「結婚する人はいない」などと言われた愛子様がもし結婚願望をお持ちだったら、とんでもない失言である。
何の資格もないのに、個人の心を傷つける発言を公にするというのはありえない。
代々の天皇の皇后になられた女性にも不敬極まる発言である。
この発言の根底には天皇(上位)その配偶者(下位)という身分構造の中で、下位である配偶者に男性が属するというのは許容しがたいという男尊女卑的発想があることは疑い得ない。
国際的にも先般崩御したイギリスのエリザベス女王陛下もその王配としてフィリップ殿下がいた。
国際的には王配という存在もいるなかで「結婚する人はいない」とする発言をしてしまう、中曽根の心根はやはり問題だ。
(3)男子を産まなきゃならないというプレッシャーという発言
愛子様が即位することが前提ならば、女性天皇が容認されているのだから、愛子様が男子を産まなければならないというプレッシャーは存在しない。
愛子様が即位することが前提でなければ、やはり男子を産むよう圧を加えられることはない。
つまり論理的には存在しないプレッシャーについて言及する無価値な発言ということになる。
唯一意義を認めるとすれば、やはり女子を産むより男子を産む方が偉いという男尊女卑思想である。
3 まとめ
中曽根は己の偏見によって、思想も論理もすべて捻じ曲げながら、一人の女性に対して極めて無礼な発言をしたということになるであろう。
このような人間が所属する政党が保守を名乗るとはちゃんちゃらおかしい。
まず人としてどうかと思う。