認証官任命式の場所に関する件――第2次高市内閣改造に寄せて

2026年9月17日、高市首相は内閣改造を行った。

2026年2月18日に発足した第2次高市内閣が行った初めての内閣改造である。

 

1 「竹の間」が生んだ憶測

この件について、天皇が臨席する国務大臣の認証式が、皇居の竹の間で行われたことが報じられ、様々な憶測が生じている。

後述のとおり、認証式は松の間で行われる慣例があり、竹の間は松の間よりも格式としては落ちる。

そして、竹の間には大きな緑色の壺が置かれていること。

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の蔑称が「壺」であること。

天皇陛下と高市首相の心情的な対立が週刊誌等で報じられたこと。

以上のことから、「高市に反感を持った天皇陛下が、敢えて格式が低く、かつ、大きな壺を設置している竹の間で認証式を執り行ったのではないか」という憶測が出たわけである。

笑い話ではあるが、このような憶測は根も葉もないものだろう。

まず天皇が反政権的なメッセージを、このような卑屈な形で示すことはそもそも想定できない。

 

ということで、今までの国務大臣の認証式についてちょっと調査してみた。

 

2 認証式

そもそも認証式について。

内閣改造は新しい国務大臣を任命する手続きともいえる。

国務大臣の任命は内閣総理大臣の権限であることが日本国憲法に定められている(憲法68条1項本文)。

ただ、国務大臣の任命は天皇が認証することになっている(憲法7条5号)。

任命を天皇が認証する公職を認証官と呼び、認証官を天皇の面前で内閣総理大臣が任命する式典のことを認証官任命式という。

通称「認証式」という。もっとも、認証の式典ではなく、認証した者を任命する式典なので、認証官任命式が正しい。

 

ちなみに内閣総理大臣のように、指名に基づき天皇が任命する公職(憲法6条1項)は、親任官と呼ぶ。

親任官を天皇が任命する式典のことは新任式という。

 

新しく内閣総理大臣が任命されるときは、組閣として、同時に内閣総理大臣によって国務大臣が任命されるのが通常である。

そこで、親任式と認証官任命式は同日に行われることもある。

 

3 皇居の部屋と認証式の関係について

皇居と一口にいっても、実はいくつかの地区に分かれている。

代表的なものが宮殿と御所だ。

宮殿は主に公的な行事を行う空間で、御所は主に天皇陛下の私的な生活を行う空間と整理できる。

 

認証式は公的行事なので宮殿で行われる。

宮殿は様々な部屋や設備で構成されている。

代表的な部屋が松の間であり、最も格式が高い、つまり大事な式典を行う場とされている。

その他に竹の間、梅の間などがある。松竹梅というように、ランクとしては松の間のほうが上だ。

松の間かどうかはすぐに分かる。というのも、欅の板張りの部屋は松の間しかないからだ。

そして、竹の間は緑の大きな壺が置かれていれば分かる。この壺は緑地金襴手飾壺(りょくじきんらんでかざりつぼ)というらしい。

 

認証式は松の間で行われるのが慣例である。

 

4 令和に行われた国務大臣の認証官任命式について

ちなみに、令和に入ってから確認しただけで国務大臣の任命式は20回行われているようだ。

第4次安倍内閣の第2次改造(2019年9月11日)が令和になってから初めての国務大臣の認証式である。

その認証式から全20回、どこで行われたかを写真等で調査した。

 

すると、第4次安倍内閣で行われた国務大臣認証式は2019年9月11日、同年10月25日、同年10月31日の3回あったが、いずれも竹の間で行われていた。

代替わりの即位式の関係で松の間が使えないことが原因だったそうだ。

 

その後、2020年9月16日の菅義偉内閣発足から2026年2月18日の第2次高市内閣発足までの間、竹の間で行われた認証式は確認できなかった。

調べてもわからなかったのが、2021年2月18日と同年6月25日に行われた国務大臣の交代の際の認証式だ。写真等が見つからなかった。

2月の認証式は東京五輪の関係で橋本聖子から丸川珠代に交代、6月の認証式は市長選に出る関係で小此木八郎から棚橋泰文に交代した際のもの。

あと、認証式にあわせて親任式が行われている場合は、親任式が松の間で行われていることが確認できれば、認証式も松の間で行われているだろうと推測している。

 

つまり、松の間が使えない時期は、竹の間が代わりに使われているようである。

今回も宮内庁によると照明工事の都合で松の間が使えなかったそうだ。

それ以上の意味はないだろう。

 

イギリスの王室はかつて習近平の訪英時に居眠りをしたり、1989年ものワイン(つまり天安門事件と同じ西暦)を出すなど、細かな嫌がらせをしていたと報じられた。

それだって眉唾物だが(笑)、日本の皇室がそのような「ジョーク」を発揮できる時代ではないし、それが望ましいともいえない。

 

 

(参考)

内閣名 組閣日 認証式の日 親任式 部屋 宮内庁Websiteより
1 安倍4-2 2019/9/11 2019/9/11 竹の間 https://www.kunaicho.go.jp/watch/activity/schedule01/201909/index.html
2 安倍4-2 2019/9/11 2019/10/25 竹の間 https://www.kunaicho.go.jp/watch/activity/schedule01/201910/index.html
3 安倍4-2 2019/9/11 2019/10/31 竹の間 https://www.kunaicho.go.jp/watch/activity/schedule01/201910/index.html
4 2020/9/16 2020/9/16 松の間 https://www.kunaicho.go.jp/watch/activity/schedule01/202009/index.html
5 2020/9/16 2021/2/18 https://www.kunaicho.go.jp/watch/activity/schedule01/202102/index.html
6 2020/9/16 2021/6/25 https://www.kunaicho.go.jp/watch/activity/schedule01/202106/index.html
7 岸田1 2021/10/4 2021/10/4 松の間 https://www.kunaicho.go.jp/watch/activity/schedule01/202110/index.html
8 岸田2 2021/11/10 2021/11/10 松の間 https://www.kunaicho.go.jp/watch/activity/schedule01/202111/index.html
9 岸田2-1 2022/8/10 2022/8/10 松の間 https://www.kunaicho.go.jp/watch/activity/schedule01/202208/index.html
10 岸田2-1 2022/8/10 2022/10/25 松の間 https://www.kunaicho.go.jp/watch/activity/schedule01/202210/index.html
11 岸田2-1 2022/8/10 2022/11/11 松の間 https://www.kunaicho.go.jp/watch/activity/schedule01/202211/21265.html
12 岸田2-1 2022/8/10 2022/12/27 松の間 https://www.kunaicho.go.jp/watch/activity/schedule01/202212/index.html
13 岸田2-2 2023/9/13 2023/9/13 松の間 https://www.kunaicho.go.jp/watch/activity/schedule01/202309/index.html
14 岸田2-2 2023/9/13 2023/12/14 松の間 https://www.kunaicho.go.jp/watch/activity/schedule01/202312/22508.html
15 石破1 2024/10/1 2024/10/1 松の間 https://www.kunaicho.go.jp/watch/activity/schedule01/202410/index.html
16 石破2 2024/11/11 2024/11/11 松の間 https://www.kunaicho.go.jp/watch/activity/schedule01/202411/index.html
17 石破2 2024/11/11 2025/5/21 松の間 https://www.kunaicho.go.jp/watch/activity/schedule01/202505/index.html
18 高市1 2025/10/21 2025/10/21 松の間 https://www.kunaicho.go.jp/watch/activity/schedule01/202510/index.html
19 高市2 2026/2/18 2026/2/18 松の間 https://www.kunaicho.go.jp/watch/activity/schedule01/202602/20260218-01.html
20 高市2-1 2026/2/18 2026/9/15 竹の間

内閣名の後の数字は、ハイフンの前が発足数次、ハイフンの後が改造数次である。