本日、天皇皇后両陛下のご臨席の下、戦後78年目の全国戦没者追悼式が挙行された。
今年は61回目の全国戦没者追悼式でもあった。
ちなみにこれまでの記事はこちら。
今年のおことば
まずは引用。
本日、「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり、全国戦没者追悼式に臨み、さきの大戦において、かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い、深い悲しみを新たにいたします。
終戦以来78年、人々のたゆみない努力により、今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが、多くの苦難に満ちた国民の歩みを思うとき、誠に感慨深いものがあります。
これからも、私たち皆で心を合わせ、将来にわたって平和と人々の幸せを希求し続けていくことを心から願います。
ここに、戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ、過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、全国民と共に、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
出典 宮内庁HP 主な式典におけるおことば(令和5年) 令和5年8月15日閲覧
昨年のおことばとの比較
昨年のお言葉
令和4年のおことばは以下の内容だった。
本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
終戦以来77年,人々のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,多くの苦難に満ちた国民の歩みを思うとき,誠に感慨深いものがあります。
私たちは今,新型コロナウイルス感染症の厳しい感染状況による様々な困難に直面していますが,私たち皆がなお一層心を一つにし,力を合わせてこの難しい状況を乗り越え,今後とも,人々の幸せと平和を希求し続けていくことを心から願います。
ここに,戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ,過去を顧み,深い反省の上に立って,再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,全国民と共に,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
出典 宮内庁HP 主な式典におけるおことば(令和4年) 令和4年8月15日閲覧
変更箇所
さて、変更箇所を明確化してみよう。令和3年のおことばが今年は次のように書き直されている。(太字が変更箇所)
本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。
終戦以来78
77年,人々のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,多くの苦難に満ちた国民の歩みを思うとき,誠に感慨深いものがあります。
私たちは今,新型コロナウイルス感染症の厳しい感染状況による様々な困難に直面していますが,これからも,私たち皆がなお一層心を一つにしで心を合わせ,力を合わせてこの難しい状況を乗り越え,今後とも,将来にわたって平和と人々の幸せと平和を希求し続けていくことを心から願います。ここに,戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ,過去を顧み,深い反省の上に立って,再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,全国民と共に,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
雑考
コロナへの言及がなくなったこと
令和2年以来3年連続であった新型コロナウイルスへの言及が、今年はなくなった。
政府見解に沿ってアフターコロナなのだろう。
「平和」の重要度
他方、今年最大の特徴は、例年「人びとの幸せと平和を希求」とあった箇所が、「平和と人々の幸せを希求」に変更された点である。
実は、全国戦没者追悼式でのおことばは、令和元年は、3段落で構成されていた。これは現上皇が皇位にあった時のおことばと同様である。
ところが令和2年に入ってコロナが流行り始めたため、コロナに言及した段落が1つ追加され、4段落で構成されるようになった。これが令和2~4年まで続いたのである。
その間、「人びとの幸せ」と「平和」は、まず「人びとの幸せ」を挙げ、次に「平和」を挙げて、「希求」という言葉につながっていた。今年は、まず「平和」を挙げて、次に「人びとの幸せ」を挙げ、「希求」という言葉につなげている。
この語順の変更には、重要な意味があるように思われる。おことばの表現からは、平和の希求がより重要度を増していることを意味すると思われるからである。重要度ではなく切迫度かもしれない。
失われるかもしれない「平和」をまず希求する、そのような意図を感じた。