年末年始とお盆あたりによく耳にする言葉に「三権の長」という言葉がある。
年末年始は三権の長がそれぞれ国民に向けて挨拶するので耳にする。ホームページなどで挨拶文を見ることができる。お盆に終戦の日の戦没者慰霊のために式典に出席するために耳にする。
三権の長は日本で強い権力を持っている人達だ。
三権とは?
三権とは日本にある3つの権力を指している。
1つは立法権。法律を作る力。法律を作ったり、無くしたり、変えたりする力だ。
もう1つは司法権。法律を使って判断する力。法律が憲法違反かどうかを判断する力と、法律を適用してトラブルを最終解決する力だ。
最後に行政権。法律に従って仕事をする力。立法権や司法権以外の国の力をいう。税金を集めたり、税金を使ったりする権力は、大体行政権だ。
長とは?
三権の長の「長」は、長官とか長老とかの「長」。要はトップ。
立法権は国会にある。だから国会のことを立法府という。
立法権のトップは国会の議長だ。法律を作る話し合いを仕切っている人だからだ。
ところで、日本の国会は2つに分かれている。衆議院と参議院だ。議長もそれぞれの院に1人ずついる。
衆議院議長と参議院議長はどちらが偉いか決まりはない[1]もっといえば、国会議員全体でみても誰が偉いかは決まっていない。議長は話し合いをする上で必要な司会者という役割だ。。
だから国会のトップである立法権の長は衆議院議長と参議院議長の2人ということになっている。
ちなみに、衆議院の優越という言葉がある。しかし、衆議院のほうが参議院より常に強いというわけでもない。だから参議院議長もトップとされている。
司法権のトップは、最高裁判所の裁判官達のリーダーだ。
この人のことを最高裁判所長官という。
だから司法権の長は最高裁判所長官である。
そして行政権のトップは内閣総理大臣、首相にある。
だから行政権の長は内閣総理大臣である。
なぜ三権あるのか
1人の人間が、立法権、司法権、行政権の全てを握っている場合を考えて欲しい。
この場合どのようなことが起こるだろうか?
当然この権力者は、自分に都合の良い法律を作り、自分に都合良く適用し、問題が起きても自分に都合の良い裁判をするだろう。
そうすると、権力を行使されている人々は、生きた心地がしなくなる。
そのため、最近では権力を分けるべきだという考え方が強い。これを権力分立という。
そして、分けすぎてもややこしくなるから、立法権、司法権、行政権の3つくらいに分けるのが流行だ。
日本もそうしている。分け方は世界の色々な国で、色々な分け方がされていて調べると面白い。
今の三権の長は?
衆議院議長は細田博之さん。
参議院議長は山東昭子さん。
最高裁判所長官は大谷直人さん。
内閣総理大臣は岸田文雄さんだ。
(2021年12月11日時点の情報に更新しました。)
よくある誤解
三権の長は3人?
三権という言葉にひきずられて、三権の長も3人だと思っている人がいる。正しくは4人だ。国会に2人いるから。
三権の長の中で偉いのは誰?
三権の強さは時と場合によって変わる。
例えば憲法では41条に国会のことを「国権の最高機関」と書いている。だから憲法上は一応最高のものと扱われている。
しかし、例えば偉い人が座る順番(席次)で見ると、内閣総理大臣の方が国会の両議長より偉い席に座ったりもする。
握っている権力が違うので、一概に比べることはできないけれども、通常なら、法律を作ることが出来る国会が一番強いと思ってよいとは思う。
内閣や裁判所は国会が作った法律に従わなければならないからだ。
例外的に、裁判所は憲法に違反する法律には従わなくても良いとされており、国会もその判断は覆せない。
また、内閣も国会が自分に賛成してくれなければ、衆議院に限り解散して国会議員を一旦辞めさせてしまうこともできる。
三権の長が日本のトップ?
三権の長が日本で一番強くて偉いかというと、そうではない。
あくまでも日本で一番偉いのは国民だ。日本で一番権力を持っているのは国民だ。
これを国民主権という。
三権の長は、国民から権力を預かって、代わりに行使しているにすぎない。
なにしろ、国民は、法律を作ることが出来る国会議員を選ぶことが出来るからだ。
内閣総理大臣が立法権のトップ?
内閣総理大臣は法律についてよく話している。今の安倍さんもそうだ。
だけど、内閣は国会に「こんな法律を作っては?」と提案できるけど、法律を作ることはできない。
だから立法権のトップではない。
(ただ、安倍前首相は「私は立法府の長」と発言して問題になったことがある。)
References
↑1 | もっといえば、国会議員全体でみても誰が偉いかは決まっていない。議長は話し合いをする上で必要な司会者という役割だ。 |
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